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映画『カティンの森』再び

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以前、このブログ(2013/07/07)で映画『カティンの森』を取り上げたが、今日は、東京外国語大学の「ポーランド映画の傑作を読む」第二回目の講義(久山宏一先生の講座)で、この映画を取り上げたので、若干の補足をしておきたい。

歴史的事実については、Wikipediaなどに譲るとして、1940年、ポーランドで起きたこの事件について、ワイダ監督は、映画化するにあたり、相当の年月を費やしたことがわかった。ワイダ監督は原作を探すにあたり、この原作となった『死の後(ポスト・モルテム)』(アンジェイ・ムラルチクによる長編小説)に巡り会うまでに、オドイェフスキの『敗れざる者たち、歩く者たち』という小説の映画化に失敗していたということである。

ムラルチク原作の小説を映画化するにあたり、1990年代半ばから30のシナリオを練っての映画化ということだという。つまり、この事件の事実がポーランドで自由に発言できるようになってから、20年近くの歳月が必要であったということになる。

わたしは好き嫌いで言えば、こうした歴史や政治を中心にそえる映画は苦手だが、日本人には想像すらできない祖国を失うこと、祖国を何度も分割された経験を持つポーランドの歴史を知ることは、20世紀や同時代史(現代史)を知る上でかかせない。やはり、ワイダ監督の映画はすべて見なければポーランド映画は語ることができないと言えそうである。

映画に登場する重要なシーンを一つ、紹介しておこう。映画の中にクリスマスのシーンが登場するが、ポーランドでは、クリスマスに参加する人数の他にもう一人分の皿をテーブルに用意してクリスマスを迎えるのが習慣となっているという。不意に訪れるお客様に対処するためということらしいが、その起源は民俗学的な背景がありそうで、興味深い。それにしても、久山先生の映画の読解の深さには驚嘆するばかりである。映画とは絵画と同じで、観るものによって全く異なる世界が表現されているといってよい。観る者の教養が試されるということなのだと思う。
by kurarc | 2015-05-08 23:44 | cinema