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高床住居のパースペクティブ

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2年前に竣工した門前仲町の住宅に久しぶりに伺う。塔屋の部分の汚れの現況を見るためであった。2年過ぎた住宅は、植栽がしっかりと住宅になじみ、地域に根付いた様を拝見できて、喜ばしかった。

この住宅は、浸水が危惧される地域であることから、1階の床の高さは、前面の歩道からおよそ1m立ち上がった高床住居として計画された。建築基準法では、通常45センチ以上が基準の高さとして決められているから、通常、1階床高さは地盤面から45センチ〜60センチ程度が標準である。

わたしの数少ない仕事のなかでも、伊豆の仕事、葉山の仕事、藤沢の仕事は高床住居といえるものであることに、今日、あらためて気づかされた。伊豆は湿気対策のため、葉山は1階が艇庫であるため、藤沢は、この門前仲町と同じ理由による。

以前、このブログで紹介した恩師、太田邦夫先生の『世界の住まいにみる工匠たちの知恵』という書物の第2章にも、「浮上する高床の住まい」という章があり、こちらは、穏やかな洪水が起こるような地域で、住宅が水に浮くように工夫されたタイの高床住居が紹介されている。高床の床下に竹の束を常時配備させておいて、洪水のときには、その竹の浮力を利用して、船のように浮き、洪水をしのぐ、という信じられないような仕掛けのある住居である。

高床住居はそれぞれ広範な目的と自然災害などの防御から工夫された建築の一つの原型のような住居形式と言えるもので、それは、伊勢神宮や寺社建築をみてもわかるように、日本の文化の中に位置づけられてきた。

そして、今日、門前仲町の住宅の心地よい空気感を感じながら、この高床住居という形式を現在の文脈の中で深化させる方法はないだろうか、というイメージが頭のなかに浮かび上がった。まずはその前に、世界で、あるいは日本で、高床住居というものがどのような起源と歴史を辿ってきたのかを探求することは、今後の設計活動に役に立つことは明らかであろう。

鎌倉で偶然発見した建築家、曽原國蔵さん設計による離れ(加藤邸)も高床住居であった。建築におけるフィールドワークの中心にそえるべき主題の一つが発見できたということである。

*上写真:ファンズワース邸  設計:ミース・ファン・デル・ローエ
このような近代建築の高床住居の代表作を、何千年、何万年という住居の歴史から紐解いて理解すべきということである。
by kurarc | 2015-05-17 21:08 | archi-works