高床住居の系譜01 ー ロンドンのテラスハウス(ロウハウス)

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以前、某大学の助手をしているときに、学生に街路に関するレクチャーをしたことがる。たとえば、歩道がいつごろ発生したのかについて、様々な見解がある。すでに、ポンペイの遺跡の中にも歩道らしきものがあるが、それは、我々の身近にある歩道の意味とは異なっていて、街路に水(雨水)を流すため、その水をよけるため、一段持ち上げたと言われている。

歩道が誕生した一つの要因に、ロンドンのテラスハウス(ロウハウス)という住居形式が誕生したことが関連しているという見解もある。テラスハウスとは、日本で言うと低層長屋といった住居形式で、歩道からおよそ5段程度昇って、日本で言う1階があり、3〜5階程度の高さの長屋型集合住宅である。歩道と建物との間には通常空堀(ドライエリア)があり、建設当初は歩道にマンホールを設け、そこから石炭を入れて、地下部分に貯蔵できる工夫がなされているものが多かった。石炭に水がまわらないようにという配慮から、建築に接する街路を一段持ち上げたのが歩道の始まりである、と言われていて、こうしてテラスハウス誕生と共に、歩道らしきものも誕生することになったという訳である。

このテラスハウスが興味深いのは、やはり、高床住居であるということ、都市住居のアーキタイプと言われるように、18世紀末から建設されて以来、住居だけでなく、様々な活用の仕方ができるという点にある。(上写真:ロンドンの典型的なテラスハウスの一例)

1階を1メートルから1.5メートルほど立ち上げるので、バリアフリーという観点からは難点があるが、地下工事が楽であり、地下も半地下といえる空間になるので、地下室という圧迫感がない。よって、商業スペースやギャラリーのような用途にも転用できるのである。

初めてロンドンを訪れた31年前、ロンドンやその他の都市(バース)などのテラスハウスを片っ端から見学してまわった。こうした住居タイプがなぜ日本の近代に普及しなかったのか不思議だが、日本のハウジング計画が成熟していなかったということであろうか?

*こうした地下室があるタイプまで高床住居と言えるのか、という疑問が生じると思われるが、わたしは、当面、1階の床高さが地上より常識以上に高いもの(およそ1m以上)を高床住居に含めることにしようと思っている。つまり、1階がピロティーのように列柱状に開放されていなくても、高床住居と呼ぶことにする。

*高床住居についてまず明らかにしないといけないのは、1階において、地上から1m程度高い環境が日本において特に過ごしやすい環境を担保してくれるという実証的なデータ。これは独力で計測するのは難しそうだから、既往の研究をたよりにするしかないかもしれない。実証された後に計画論に進んでいかなければ意味はないが、当初は計画論と同時進行でいく予定である。

*高床住居というと一般的に、1階部分は人が立っても頭がぶつからない、あるいは、駐車スペースに利用できる、といった空間を想像するだろう。わたしの場合は、まずは、地上1m前後の高さにこだわりたいと思っている。そして、ピロティのように1階分の高さを持ち上げたような高床住居の形式と比較、対比させることが重要である。

*上に書いたように、わたしが高床住居と定義する空間は、必然的に、半地下のような空間が生じる可能性がある。よって、次に、半地下という空間の有効性について実証することも必要になってくる。この場合は、空気環境の有効性というより、計画論としての有効性になると思われるが、もしかしたら、思いがけない利用方法が考えられるかもしれない。
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by kurarc | 2015-05-30 12:11 | archi-works