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失われた武蔵野を求めて

荻窪の杉並区立中央図書館の帰り、南口駅前にある岩森書店(古書)に立ち寄る。最近では珍しく、古書にハトロン紙でカバーがしてある。昔の古本屋はほとんどこのようなカバーをしていたと思うが、めっきり見なくなった。この岩森書店は、蔵書が豊富なことも良いが、いまだに昭和の香りのする古本屋であった。

ここで、『カラー 武蔵野の魅力』(文 足田輝一、写真 小林義雄、1979)を購入する。足田氏は植物に造詣が深く、武蔵野の植生を中心に武蔵野の魅力について記述している。この著書のはじめの方で、独歩の『武蔵野』についての章をもうけていて、タイトルを「独歩が愛した落葉林ー明治における風景の発見」としている。この「風景の発見」という言葉は非常に重要で、独歩の『武蔵野』のオリジナリティーはこの言葉に要約されている。

独歩は「落葉林」の美というものを、この『武蔵野』で意識的に評価したのである。日本古来のアカマツ、クロマツといった美ではなく、紅葉し、落葉する美をまさに武蔵野に発見した。

そして、もう一つ重要なのは、この発見が、当時のロシア文学の影響による、ということである。足田氏はそのことを的確に明示していて共感がもてた。30年以上も前の著書であるが、「風景の発見」という言葉の選択は先験性をもつことはいうまでもない。

著書の前半に差し挟まれた写真も美しい。今は出会うことのできない写真が多いと思われるが、著書の最後に地図も掲載されているので、それを頼りに、時間があれば訪ねてみたい。
by kurarc | 2015-06-22 21:44 | 武蔵野-Musashino