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原書を読むということ

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『ポルトガルを知るための50章』(現在は55章)という共著の本を出版してから14年が経過した。こうした一般の書物の執筆に参加したのは、これが初めてであったが、短時間で3章分の原稿を書かなければならなかったので、仕事はほとんど休業状態で、この仕事に打ち込んだ。

執筆は主にリスボンで収集した書籍を参考にしたが、(英文が主)難解だったのは「イスラム文化の影響」という章であった。この方面での参考文献と言えるものは日本には皆無だったので、すべて英文を頼りに書くしかなかった。(幸運にもイスラム関係の英文の書物をリスボンで購入していた)よって、この章はかなり心もとない気が今でもぬけきれない。イスラム文化についてずっと以前から興味をもってはいたが、わたしの専門ではないから、間違ったことを書いているのかもしれない。そうした指摘、反応は今のところないが、それは、スペインならいざ知らず、ポルトガルのイスラム文化についてほとんど誰もが興味のないことだからだと思う。

リスボンに滞在中、リスボンの古本屋を片っ端から訪ねて、購入できる価格の古書(主に建築書)は買い求めた。その中の一つ(全5冊)、ジュリオ・デ・カスティーリョ著の『LISBOA ANTIGA - O Bairro Alto』という古書をもっているが、この書物を所有しているのは、多分、日本には片手くらいの人しかいないのではないか?

ジョージ・クブラー(アメリカ人、主に中南米芸術の研究者)の書物(上)の中で、この本を知ったが、クブラーはこの本からインスパイアーされて、"Plain Style"というポルトガル建築の特質を命名したのである。

こうしたことは、原書を読まないと誰も言及しないことだろう。ある人にとっては、こうしたことはどうでもよいことなのかもしれないが、原書を読むということは、地図を自らつくっていくような作業なので、地図をたよりに安全な道を歩いていきたいという人には無縁のことである。また、原書を読むということは、日本語で知った知識を疑うきっかけをつくってくれるので、知識を深める上では欠かせない行為と言える。

設計、デザインという作業をしていると、原書を読む時間はほとんどなくなるが、本当は原書を読む余裕がないといけないし、その時間をつくらなければならないといつも思っている。
by kurarc | 2015-08-20 22:39 | books