” アレクサンドラン ” 映画を理解するということ

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図書館から濱田高志氏著の『ミシェル・ルグラン 風のささやき』を借りてきた。濱田氏の手になるルグランのディスコグラフィーが主な内容だが、コラムのような文章が含まれていて、その中に映画『ロシュフォールの恋人たち』の製作秘話について書かれていた。

この映画が、非常に恵まれた条件のもとに撮影されたものであることがよくわかったが、それとは別に、このミュージカル映画の中で歌われる歌詞が「アレクサンドラン(アレクサンダー格)」という弱強格6脚という16世紀フランスの古典的ドラマのスタイルで書かれているということを知った。こうしたコンセプトの影響は、演技のスタイルの中にも一瞬現れることになる。新しい表現と古典的な表現の融合がこのミュージカル映画をさらに実り多いものに変化させたと言えるだろう。

ルグランは、こうした歌詞に曲をつけることに苦労したという。フランス語をわかっている人であれば、こうしたことにすぐ気づくのだろうが、わたしはこうした手法の選択に少なからず驚いた。アメリカのミュージカルとは異なるものをつくりだそうとしたということもあるが、歌詞の中に、伝統的な韻律を含ませるという考えに、やはりフランス人として言語、歴史を大切にする精神を感じたからであり、新しいことと古いことを乗り越えた先の表現をつくりだしたということになるから。

こうしたことに気がつかなくても、もちろん映画を楽しむことはできるが、知ることによってさらに映画を深く理解できるようになるし、映画というものづくりの奥深さを思い知らされることになる。映画を理解するということとは何か、と改めて自分に問いただしたくなる。

濱田氏はこの著書を「・・・風のささやき」というタイトルとしているように、「風」という言葉を含ませているが、わたしも感じた清々しい風のような映画、一方で、その中に古典的な手法をさりげなく取り入れた映画、それが『ロシュフォールの恋人たち』であったのである。

*『ロシュフォールの恋人たち』の中で、唯一吹き替えなしに歌を歌っているのは、カフェの女主人役イヴォンヌを演じるダニエル・ダリュウ。
by kurarc | 2015-09-21 21:53 | cinema