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流動するデザイン映画 『ロシュフォールの恋人たち』

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映画『ロシュフォールの恋人たち』をレンタルしてきて再びみている。この映画になぜ心をひきつけられたのか、もう少し冷静に分析してみたい欲求にかられたからである。

結論から言ってしまえば、この映画はミュージカルという形式をとりながらも、ドゥミの大胆なデザイン概念を映画の中に取り入れたことが、わたしの心をひきつけたのだと思う。

それはどのようなことか。それは、ダンスによる人の動き、そして、歌(声)、それから衣装や都市の色彩、そして、音楽、歌詞(言葉)、カメラワークを流動的に構成し、近景、中景、遠景にいたるすべての動きをコントロールしている映画なのであり、いわば流動するデザイン映画なのである。逆に、ドゥミはこうした考え、コンセプトを映画にするための形式として、ミュージカル映画の可能性を感じ、ミュージカル映画で表現することを選んだのかもしれない。

たとえば、エリック・ロメールの『満月の夜』の中で登場するアール・デコ調の調度品であるとか、映画『ジョンとメリー』の中に登場するモダン・デザインの家具といったデザインは、その背景、セットを構成するに過ぎない。しかし、この『ロッシュフォールの恋人たち』では、セットがすべて動きを持ち、計画的に流動する。映画をデザインとして成立させるような仕掛けが意識的に取り入れられている。背景をつくるためのデザインではなく、映画自体がデザインなのである。

アメリカのミュージカルに影響されてつくられたと、わたしは感じたが、ドゥミはそれ以前に、ロベール・ブレッソンの映画『ブローニュの森の貴婦人たち』に影響されていたことを知った。『ブローニュ・・・』では主人公が踊り子だというが、この映画がどれほどドゥミに影響を与えたのか、調べてみなければならない。わたしは、この映画が未見なので、この映画をみて、また新たに分析するべきであろう。

ドゥミの映画をすべてみた訳ではないが、もしかしたら、この映画が最も優れた映画なのかもしれないと今は思っている。

*上写真は映画の一シーン。手前で踊る踊り手と、広場を何気なく歩く人々(色彩豊かな衣装に注意)、そして、背景としての色彩建築。これらが、すべて関係しながら映像が形づくられる。まさに、すべてがデザインされた映画なのである。

*この映画の中で、空間として重要なのは、特設されたカフェである。広場に、一つの空間(室内空間)を設定して、その内部と外部との流動をつくりだしている。インテリアもよくデザインされている。このインテリアを誰がデザインしたのだろう?

*ラストシーン、ソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)とアンディ(ジーン・ケリー)、イボンヌ(ダニエル・ダリュウ)とシモン・ダム(ミシェル・ピコリ)の衣装の色彩の統一、女性達の下着の色にまでこだわっていることがわかる。ドゥミは色彩を流動させることを、かなり意識的に行っている。(『シェルブールの雨傘』においても)それが、この映画の基調をかたちづくっている。
by kurarc | 2015-10-04 20:34 | cinema