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風に揺れる葉叢に対する驚き 映画のはじまり

初めて映画をみたフランス人が驚いたことは、人の背後で風で揺れる葉叢の動きであったという。(『映画とは何か フランス映画思想史』三浦哲哉著より)これは、有名な話なのだという。もちろん、映画が登場する以前、人は葉叢の動きを「みていた」が、映像の中でその動きを再認識したのである。この経験によって、人は新たな視覚の時代がはじまったことをすぐに自覚できなかったかもしれないが、この新たな経験について気づいたフランス人たちは、それを哲学的に探求し始めることになる。

わたしが映画に最近こだわるのは、娯楽という側面がある一方で、こうした新たな視覚と知覚の変化について映画がよいテキストになるということである。映画の歴史も120年が過ぎ、当初の新鮮な経験をわれわれはすでに体験することはできないが、その意味を改めて振り返ってみたい、そういう時代を迎えているように思う。

映画を考えることは、現在、日常になった映像文化を根底的に考え直すきっかけにつながるのではないか、あるいは、そのことから現代の哲学のようなものも引き出せるのではないか、ということである。幸いにも、近年、日本の映画学の深化は目覚ましい。映画を楽しみながら、現代の哲学を学ぶことができるなら、これほど愉快なことはない。 
by kurarc | 2015-10-18 11:13 | cinema