椅子の座の素材について

事務所に建築家アルヴァ・アアルトがデザインした椅子がある。下北沢の骨董品店で確か3000円程度で購入したものである。アアルトのデザインということだけで購入したが、この椅子の座り心地はすこぶる悪い。座が合板でつくられ固く、相当厚いクッションを敷いても、お尻が痛くなる。アアルトの椅子は、技術的なアプローチでは独創的であったことは否めないが、著名なデザイナーたるものがこうした椅子をデザインすることでよいのか、といつも疑問に思っていた。

わたしも、一昨年ある国際コンペに提出した椅子では、綿テープ貼りのものをデザインした。それはシェーカー教団がつくる椅子にポピュラーな仕上げである。こうした座の仕上げでは、クッション等は必要ないし、長時間座ることができるようになる。綿テープが劣化した場合は、再度張り替えることができるし、セルフヘルプで貼り換えることも可能である。

地元の小学校で吹奏楽を練習するようになり、ひと月に2回ほど小学校を訪ねていて、久しぶりに小学生が座る椅子に腰掛けたが、この椅子も合板の座椅子であり、練習中にお尻が痛くなり、座ることが苦痛となる。わたしの小学生の頃は、合板ではなく、通常の木製の重い椅子で、思い思いに座布団を持参していたと記憶するが、当時、お尻が痛かった記憶がある。

こうした椅子がなぜ子供達をはじめ学生に強制されるのか、それはまずはコストの問題であろうが、テープ貼りのような椅子で、これを学生自ら行い、メンテナンスさせるようにすれば、椅子に対する愛着がわいてくるし、ものを大切にする教育にもなるだろう。

コストのことを考えると、合板や木材ではなく、チャールズ・イームズがデザインしたポリプロピレンの座(FRPからの仕様変更)の椅子のように、クッションがなくても、お尻への負担が軽い椅子もある。木材といったナチュラルな素材ばかりに頼るのではなく、まずは、座り心地という基本的な条件を満たす椅子の普及を望みたい。少なくとも、小学生たちがお尻のいたくならないような椅子でじっくりと学習に励んでもらえるようにしてもらいたいものである。どちらかの私立小学校では、そうした椅子を導入しているところがあるかもしれない。子供達を対象に椅子の調査を行ってみるのもよいかもしれない。

*木製の座でありながら、座り心地を満たせるような座の開発は可能なのか?といったことも課題として浮かび上がってくる。

*事務所にはイームズの椅子のレプリカ(安価なもの)もあるが、この椅子はばかにできない。座り心地は非常によいし、クッションなしでもかなり長時間座ることができる。この椅子に座ると、アアルトの椅子に座ることができなくなる。座り心地の悪い椅子は、身体に大きなストレスを与えるということがよくわかった。椅子は「身体のための靴」と考えられる。

*小学校のような場で使われる椅子には、規格といったことがからんでくるようだ。耐久性や安全性などが優先されるため、自ら座の仕上げを張り替えるような行為はあり得ないのだろう。しかし、規格を優先させるがために、現在のような座り心地を強制されているのは本末転倒以外のなにものでもないと思う。

*図書館に置いてある椅子も座り心地の悪いものが多い。本をじっくりと読んでほしくないのだろうか?
by kurarc | 2015-10-24 16:07 | design