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「北欧家具」という神話 ケアホルムの椅子の座

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前回のブログでアルヴァ・アアルトのある椅子に対する嫌悪感を素直に書いたが、現在、流通する北欧家具というジャンルに対しても、われわれは慎重にならなければならない。北欧家具がすべて優れているわけではないのである。

座について前回で書いたが、そのことに注意して、わたしの椅子の辞書とも言える書物『デンマークの椅子』(織田憲嗣著)を座に注意しながらもう一度眺めてみた。

そうすると意外なことに改めて気がついた。わたしの敬愛するデザイナー、ポール・ケアホルム(ケアハン)は、デザインを突き詰めて行くタイプの、真のデザイナーの1人だが、座についてだけみても、彼は非常に気を使っていて、合板一枚ですませるようなデザインの椅子はこの書籍には掲載されていない。

特に注意をひきつけられたのは、PK-12と命名された椅子である。この椅子では、座の部分に木を使いながらも、それをテープのように編んで使用している。この椅子の座り心地、感触は定かではないが、少なくとも合板の椅子よりは心地よく座ることができるのではと思われる。そして、木を使った座でありながら、座り心地を考慮した彼の試み、意図が感じられる。

ケアホルムのデザインは、デザインのためのデザインのようなところがある、と勝手に理解していたが、彼は、椅子に座る、という基本的な条件をおさえた上でデザインをしていたことに改めて気づかされた。手元にある別のケアホルムの作品集を眺めても、PK-0と命名された椅子が合板のみの仕様だが、これもかなり曲面を多用して、座り心地を考慮していることがわかる。

ケアホルムは基本を忠実に守りながらも高度なデザインを行える、デザイナーの中でも突出した一流のデザイナーであることを確信した。

*たとえば、PK-9というケアホルムの椅子は、彼の妻が砂浜に残した跡(多分、お尻の跡)からインスピレーションを得たという。彼が、座にこだわっていたということが、このエピソードからもよくわかる。(写真は、PK-9、Republic of Fritz HansenのHPより引用)

*ケアホルムの問題は、そのデザインの完成度があまりにも高いために、家具が高価であるということだろう。彼が一般市民のためのデザインを行っていたら、何も言うことはなかったのだが。
by kurarc | 2015-10-25 14:37 | design