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映画『シルス・マリア』 マローヤのヘビ ジュリエット・ピノシュ

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新宿のシネマカリテで、『アクトレス 女たちの舞台』(原題 『Sils Maria』シルス・マリア)をみる。ジュリエット・ピノシュが女優役として、その苦悩を熱演している映画である。

女優とはどのような表現者なのか?誠実な女優であれば、その苦労は並大抵のものではないはずだ。特に、ある年齢に達してから、すでに若さを武器にすることもできず、表現の可能性については常に挑戦者でなければならない。同じような女優でいることは、ひと時も許されない存在なのであろうと想像される。(そして、そうした女優こそ、ジュリエット・ピノシュが歩んできた道であった。)

そのような想像をこの映画は主題にしている。ラストシーンまで、ジュリエット・ピノシュの演じるマリア・エンダースという女優は、抜け道のない迷宮に入り、このまま終わってしまうのではないか、と思わせるが、監督のオリヴィエ・アサイヤスは、最後にある仕掛けを用意していた。マリアが再び輝きを取り戻すであろうと予想されることで、映画は幕を閉じた。

こうした映画の主演を演じるピノシュは、試行錯誤を繰り返すことを日課とするくらいの女優魂をもっている優れた女優であるのだろう。正直、わたしは彼女の映画はかなりみているが、女としての魅力はあまり感じていなかった。しかし、今回、この映画で改めて彼女の映画人としての存在の大きさに気づかされた。彼女は間違いなく大女優であるという確信をもった。

シルス・マリアとは、スイスの景勝地の名称である。(映画では、この景勝地で次の舞台の稽古が行われる。)この渓谷に、「マローヤのヘビ」と言われる雲がかかると、その後に天候が悪化するのだという。その雲の動きは映画の中でも紹介されるが、雄大で、不気味な雲である。その動きは、女優の心の不安を表しているようでもあり、もう少し普遍的な人間のあり方を表しているようにもみえた。

新宿駅前にあるシネマカリテは初めて利用したが、毎週水曜日が1000円で鑑賞できるというサービスがよい。毎月1日のみのサービスディだけでは、サービスとは言えない。こうした映画館でよい映画の上映が切に望まれる。

*ジュリエット・ピノシュの母親がポーランド人であることを初めて知った。
by kurarc | 2015-11-05 22:40 | cinema