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街路の名前

一時、テレビのクイズ番組のレギュラーだった篠沢秀夫著の『フランス三昧』という新書をながめていると、彼が昔住んでいたパリの街路の場所が記してあった。72, rue Claude-Bernard, Paris 5eで、パリ第5区クロード=ベルナール通り72番だという。

グーグルではすでに、この街路名を入力すると、パリのこの通りが特定できる。さらに、画像もあるから、かなりどのような雰囲気の街路かつかむことができる。

それとは反対に、日本では番地による住所表記であるから、点として住所を特定するだけで、その場所が「青山通り」といった有名な街路でないかぎり、その街路の雰囲気まで気を配ることはない。日本では町家が軒を連ねるような街路でない限り、空間、佇まいとしての街路の表情は空虚だ。

わたしは街路に名前をつけるという欧米の習慣が結構好きである。比較的新しい習慣であると聞くが、何がおもしろいかといえば、まず地図を見ることがおもしろくなる。地図のすべての街路に名前がついているから、その街路がどのような歴史をもつのか想像がかき立てられる。都市の中で、人はまず街路を歩く(または車で走るなど)のだから、街路に名前がつくということは、街路に最小限の敬意を表しているようにも思える。名前があれば、街路は大切にされるだろう。

日本にもそうした習慣がない訳ではない。坂道や階段には名前を持つものが多い。日本でもそうした場所、空間は特別な力を都市に放っているから、大切にされている場所が多い気がする。

わたしがポルトガルのリスボンで最も長く住んだ場所は、「石のウサギ」という名前の街路に面していた。この名前を聞いただけで、忘れることはないし、その街路がいつまでも愛おしくなる。

*ポルトガルでは、角地のような2つの通りに面している場合、その建物の番地は、どちらの街路が命名されるのか?わたしの予想だが、エントランスのある面の街路が住所とみなされるようだ。わたしの住んでいた場所は「石のウサギ」という街路(通り)に面していたが、角地であり、もう一面、エントランスのある方はシルヴァ・カルバーリョ通りといった。わたしの住まいだったところは、こちらの通り名が住所になっていたので、上のような予想をしてみたのである。
by kurarc | 2015-11-24 21:22