『El Sur』 再び

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映画『灰とダイヤモンド』の中の台詞にスペイン戦争という言葉が入っていたこともあり、真っ先に頭の中に浮かび、読み返したくなった小説が『El Sur』(エル・スール)であった。

映画『El Sur』の原作であるこの小説は、アデライダ・ガルシア=モラレスというスペイン人女性作家の作品である。この名前だけをみるとポルトガル人の血も入っているのではと思わせるが、定かではない。彼女の生まれが、バダホスというポルトガル国境に近い街なので、わたしの予想もまんざらではないのではないか?

まだ読んでいる途中だが、この小説が興味深いのは、娘と父という二人の精神のリレーのような小説である、ということだろう。父はスペイン戦争の苦悩を背負い、自殺するが、その父の最も良き理解者が、彼の妻でなく彼の一人娘であったということである。娘の父への思慕と娘の精神の成長する過程が重ね合わされ、言葉が流れて行く。その言葉の動きと心の動きが見事に重なり、娘の南(El Sur)への旅へと続く。

わたしは小説を読むのは苦手だが、こんな小説が書けるのであれば、自分でも書いてみたい衝動にかられる。そして、映画もそうであるが、この小説は一般の人間がもつスペイン、スペイン人のイメージを変えてくれる小説である。こんなにも内省的なスペインがあるのかと驚くが、このこともわたしはポルトガルとの連関を思わずにはいられない。が、安易な予測はやめて、むしろ、これもスペインなのだ、と理解すべきだろう。

※以前も書いたが、彼女がこの小説を書いた場所、カピレイラ(スペイン シエラネバダ山中)を旅したことがある。シエラネバダ山中の集落をどれか訪ねてみたいと思い、選んだのがこの街であった。そして、彼女の生まれた街バダホスには、ポルトガルからスペインのメリダ、サラマンカへの旅の途中に通りがかっている。バダホスはポルトガルとの国境の街。ポルトガルがルシタニアと言われたときには、この辺りはスペインではなく、ルシタニアであったはずである。つまり、バダホス周辺はガリシア地方と同様、スペインの中のポルトガルのような地域と言えるだろう。
by kurarc | 2015-11-30 22:38 | books