エリック・ロメール 映画『秋物語(恋の秋)』 ローヌ河の風

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昨日、久しぶりにエリック・ロメール監督の映画『秋物語(恋の秋)』をみた。前回みたのは、ポルトガル滞在中であった。(1999年9月2日にリスボンの映画館でみている)ポルトガル語の字幕だったこともあり、あまりストーリーは記憶にないし、多分、その頃は半分寝ていたかもしれない。ロメールの映画を楽しめるようになるには、ある程度、年齢を重ねることが必要になる。

ロメールの四季の物語のシリーズの中では、この映画が最も好きかもしれない。冒頭のシーンから、心地よい風を感じる映像や透明感のあるフランス、ローヌ河近郊の風景に引き込まれて、最後まで飽きずにみることができる。

ドゥミの映画をずっと渉猟してきたが、彼の映画とロメールの映画はかなり対照的なことが理解できた。ドゥミの映画がデザインされた空間の中で繰り広げられるおとぎ話といった趣きであるのに対し、ロメールの映画はデザインを排したナチュラルな空間の中で繰り広げられる日常の表現である。ドゥミが技巧を重んじるマニエリズムの映画だとすれば、ロメールはボッティチェリの絵画の世界のようなルネサンス映画という感じである。

これらはどちらも独自の世界を展開していて、どちらが良いかということは難しい。お互いが補完し合っているような関係の映画だから、ロメールの映画に飽きるとドゥミの映画をみて、その反対のこともある、といったらいいだろうか。

それにしても、久しぶりにみたロメールの映像は新鮮であった。ロメールの映画『緑の光線』で主役をつとめたマリー・リヴィェールはすっかり大人の女性に成長していて、『緑の光線』のときの青臭さはなく、美しい女性に変身していた。

ドゥミの『ロッシュフォールの恋人たち』のテーマは「幸福感」であったが、この映画もロメール流の幸福感の表現と言えるもので、見終わったあとも、フランスの秋の風が頭の中を吹き続けている感覚が消え去ることがない。彼の映画はやはり、すべてみなければならないだろう。
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by kurarc | 2015-12-14 21:37 | cinema