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E.T.A.ホフマン著『隅の窓』 眼下に望む人生の縮図

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正月の三箇日は読書や映画を楽しむことにしている。今年初めて読んだ短編小説は、E.T.A.ホフマン著『隅の窓』である。『ホフマン短編集』(池内紀編著、岩波文庫)所収。

両足が不自由になった従兄とわたしとの対話による短編。部屋の窓の眼下に広がる広場で繰り広げられる市に集まる群衆を望遠鏡で観察しながら、その人の生い立ちを次ぎ次に想像していく。作家である従兄の観察眼はするどく、人を眺めただけで、その人の出生、身分や性格にいたるまで次々と読み解いていく。

従兄からは、その広場に集まった群衆、民衆への愛情が語られる。そうしているうちに、広場の市は終わり、次々と雑踏が消え去って行く。「人生の縮図」である広場讃歌としての短編。従兄にとって「窓」とは、「小宇宙のパノラマを映し出す広大な鏡」(池内)に等しい。

この足の不自由な従兄は、池内によれば、ホフマン自身と重なるという。46年という短い生涯の中で、晩年は脊椎カリエスを病み、足腰が立たなかったというホフマン。この短編も口述筆記によるものだという。

小説の中に、従兄のベッドの天蓋に掲げられたラテン語の言葉は、

「タトエ今ハ酷(むご)イトシテモ、イツマデモ酷イママニ続キハシナイ」

と大きな紙に記されていた。それは、ホフマン自身へ投げかけられた言葉であったのだろう。正月早々、よい短編に巡り会った。
by kurarc | 2016-01-01 15:53 | window