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イームズ "シェルサイドチェア”から椅子の仕様を考える

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イームズのデザインした”シェル サイドチェア”(上画像はハーマンミラー社のHPより借用)のリプロダクト品について、昨年このブログでその座り心地について書いた。それから、少し時間が過ぎ、この椅子を使用する経験から、椅子に求められる仕様について、考えがまとまってきたのでメモをしておきたい。

この椅子はデザインという観点からすれば美しく、オリジナルにおいても価格は手頃であり、申し分のない椅子と言えるが、この椅子の大きな欠点に気がついたのである。それは、この椅子のコンセプトでもあり、名称にもなっているシェル構造の欠点である。

ポリプロピレンによって一体成形された座と背はデザインとして美しい。しかし、このポリプロピレンは、座として使用されるのには適切であるが、背として使用されるには柔らか過ぎる、というのがわたしの結論である。

椅子に求められる柔軟性は、まず第一に座においてであり、背に柔軟性をもたせると、身体が椅子とともに揺れて、安定しないことに気がついた。例えて言えば、建築は固い床が必要であるが、その床柔らかければ、歩いていて不安定になってしまう。そういう感じなのである。

椅子は、座と背をしっかりと保持することが必要だ、ということである。そして、背に求められる柔軟性は、背が当たる箇所のみで十分であり、背全体に柔軟性を持たせる必要はないということである。

こうしたわたしの結論は、実はごく一般の椅子の仕様でよいということを述べているに過ぎない。座はクッションやラッシュシート(Rush seat)のような仕様で臀部を支持して、背は背骨があたる箇所を工夫し、背全体の構造はしっかりと椅子に固定されている椅子がよい、ということである。デンマークの著名な作家の椅子はおよそそのような構造をもっている。ハンス・ウェグナーの”The Chair"(下写真 ケネディー大統領が座っている椅子ほか PP Møbler社HPより借用)がそのよい例といったところだろうか。

なぜこのようなことを書いたのかというと、少なくともイームズはこの椅子に限っては、座ることのリアリティが欠落した椅子をデザインしてしまったのではないか、ということを確認したかったからである。椅子のデザインは美しいだけでは合格点はあげられないということであり、自分が椅子をデザインするときに気をつけたい、ということである。

*この文は、リプロダクト品とオリジナルの椅子は、ほぼ座り心地が変わらないという前提で書かれている。
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by kurarc | 2016-01-11 22:26