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映画『アンジェリカの微笑み』とショパン

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渋谷のユーロスペースにて、映画『アンジェリカの微笑み』(写真は公式サイトより借用)をみる。正直に言うと、映画の完成度が高いとは言えない作品であった。特に、光の使い方に繊細さが感じられないシーンが多かったのは残念であった。しかし、オリヴェイラ監督にしか描くことができないであろうポルトガル性を感じられる映画。そして、ポルトガル語の明快な響きを楽しめた映画であった。

特に、わたしにとってこの映画は、映画音楽として使われたショパンのピアノ・ソナタ第3番ロ短調作品58やマズルカ36番イ短調に出会うための映画となる。この映画をみていなかったら、このピアノ曲を聴くことはなかったはずである。そして、演奏は、ポルトガルを代表するピアニスト、マリア・ジョアン・ピリス。彼女の演奏を久しぶりに映画とともに楽しむことができた。

映画の内容は、ポルトガルのことをよく理解していないとわかりづらいと思う。理解していたとしても、この映画が何を言いたかったのかは様々な想像をかき立てられる。わたしは、ユダヤとキリストとの融和をこの映画で表現したと今のところ思っておくことにするが、その融和はある写真家(ユダヤ人、セファルディム)の死をもってなされる。それは、第二次大戦の無慈悲なユダヤ人の死とは異なるが、生の中で達成されるものではなかった。

この映画で久しぶりにポルトガル語の会話を楽しむことができた。もちろん、すべて理解できた訳ではなかったが、少しでもわかることはやはり映画の楽しみが増す。映画の舞台となったポルトガル北部、ドウロ河沿いの街レグアは、ポルトガルの中では美しい街とは言えない。あえて、そのこともオリヴェイラ監督は正直に表現したのであろう。河沿いに建ち並ぶ新旧の建築物の風景はそのまま、ポルトガルの近代を象徴する。そうした風景の中、労働歌を歌いながらワイン用のブドウを苦労して栽培する労働者の姿をコミカルに描くことで、ドウロ河の歴史を素直に描こうとしている。

オリヴェイラ監督102歳(101歳で完成)のときの公開である。この映画は、昨年106歳で逝った監督の追悼を兼ねた上映であった。102歳の感性は、全く色あせていなかったことはこの映画をみるとよくわかる。
by kurarc | 2016-02-07 18:03 | cinema