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『小さいおうち』と『ちいさいおうち』

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映画『小さいおうち』をみた。女優の黒木華さんが第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞したということで、彼女の演技がどれほどのものなのか知りたかったからである。素直な感想を言えば、特別演技がよかったとは思えなかった。いつものとおりの彼女の演技であったと思う。

この映画の最後の方で、童話『ちいさなおうち』が紹介される場面があらわれる。バージニア・リー・バートン文・絵(石井桃子訳)の童話である。映画がこの童話からインスピレーションを受けたものかどうか調べていないが、わたしはこの童話に巡り会うために、この映画をみたのかもしれない、と思った。

この童話は、1954年に第1版が出版されているから、わたしの子供のときにはすでに小学校の図書室に置いてあったはずである。しかし、わたしはこの童話を読んだ記憶はない。およそ50年前に読むはずだったような童話を現在になって初めて読んでみた。田舎に佇む「ちいさいおうち」が、都市化の波にさらされ、最後には、引っ越しをして(建築的には移築されて)また、もとのような閑静な田舎に還るまでの物語である。

この童話は、都市に対する痛烈な批評を込めたものであることはすぐに理解できる。この童話を仮に5歳の時読んでいたらどのように思っただろう。わたしの子供の頃は高度成長期と重なり、この童話を真に理解できたとは思えないが、今になってこの童話をしみじみと理解できる。しかし、わたしは都市に対して悲観的な思いはもっていない。都市のすべては、人間が汗をかいてつくったものだからである。そのことを否定することはできない。ただ、ヤミクモにつくってはいけない、ということだけである。

「ちいさいおうち」は東京のいたるところにある。それらはいつか、この童話のようにそこから消え去る運命のものが大半であろう。「ちいさいおうち」をなくしたくないのならば、それを守ればよいということである。守れないのならば、なくなるしかない。

それにしても、この童話の「ちいさいおうち」には地下室がある。あたらしい土地に移ってもまず、地下室をつくってから移築している。この地下室とはいったい、何なのだろう?

*訳者である石井桃子さんが気になる。彼女は、太宰治とも接点をもっている。彼女の本をいろいろ読んでみたい。
by kurarc | 2016-03-28 21:51