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本の相性 巌谷國士氏の書物

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本には相性がある。いくら知りたいことが書かれている本でも、文章の性格によっては途中でなげだしてしまうものも数多い。最近、相性がよいと思ったのは、巌谷國士氏の書物である。なぜ、巌谷氏の書物にもっと早く巡り会うことができなかったのか不思議だ。図書館で手に取ったことはあったが、そのときにはわたしの内面の成熟度が足りなかったのかもしれないし、そのときの興味にあわなかったのかもしれない。

ブログで先日書いた『シュルレアリスムとは何か』から、巌谷氏の文章の付き合いははじまったことになるが、この書物は、書物自体がシュルレアリスムを体現しているもので、わたしにとってはすべてが眼から鱗が落ちるような内容であった。以後、まずは、巌谷氏の町(旅)に関する本を2冊手に入れた。(もちろん古書である)

その一冊は、『フランスの不思議な町』である。最初の「序にかえて」で「パリ」について書かれているが、このパリに対する感覚がわたしがイメージするパリと近似していることに驚いたのである。パリの街路は川のようであり、その川には河岸(歩道)が必ず用意されている。河岸はフランス語で「quai(ケと発音)」(プラットホームも意味する)というが、この「ケ」が、メトロの駅、運河にいたるまでいたるところに徹底して計画されている、という視点はわたしが何気なく感じていたパリの感覚を明確に言語とともに指し示してくれた。であるから、パリは遊歩の町であり、歩くことを促される、ということになる訳である。

他の一冊は、『ヨーロッパの不思議な町』である。この中でスペイン(ガリシア)やポルトガル(コインブラ)について書かれているが、この記述もわたしが感じるスペイン、ポルトガル観に近い。偉そうに言って恐縮だが、わたしが感じていたことを文章にしてくれている、という感覚なのである。ウマが合うということなのかもしれない。巌谷氏の書物は、わたしには非常に読みやすいのである。

巌谷氏の書物によって、わたしはあらためてフランスをはじめとする海外の藝術や都市、映画などについて考え直すことができそうである。

*たとえば、「ユートピア」という言葉を聞いて、どのようなイメージをもつか?この言葉から「楽園」であるとか「理想郷」という言葉を思い出すのであれば、それは、全くのお門違いであることを認識しなくてはならない。(これについては『シュルレアリスムとは何か』を参照のこと)

*藝術の分野では、フランスでは巌谷國士氏、ドイツでは種村季弘氏、イタリアでは田之倉稔氏といったところが、わたしにとって現在もっとも興味ある書物を書いている面々である。
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by kurarc | 2016-04-07 20:24 | books