シャルル・ペローの昔ばなしからシュルレアリスムへ

シャルル・ペローの昔ばなしを読んでいる。ペローは1628年、パリ生まれ。モリエール.ラシーヌと同時代人である。

わたしが手にしているのは、白水ブックスの『ペローの昔ばなし』(今野一雄訳)だが、「眠りの森の王女」、「赤ずきん」、「長靴をはいたネコ」、「サンドリヨン」などが収録されている。

「サンドリヨン」と聞いて、例のあの話ね、と思い浮かんだ方は、相当語学力がある方に違いない。「サンドリヨン Cendrillon」(フランス語)とは、「シンデレラ Cinderella」(英語)のこと。「サンドリヨン」とは、「灰だらけの子」という意味であり、サンドリヨン=シンデレラは血のつながりのない姉たちからそのような嫌みを込めて呼ばれていたのである。わたしもうっかりしていたが、サンドリヨン=シンデレラとは名前ではない。

「長靴をはいたネコ」など改めて読むと興味深い。ネコがこれだけ活躍する昔ばなしは思いつかない。日本ならば、ネコより忠誠心の象徴である犬の話になったかもしれない。

昔ばなしをなぜ読んでいるのかといえば、それは、シュルレアリスムとの関連であり、ジャック・ドゥミの映画を理解するためである。ドゥミは、映画『ロバと王女』(原題 ロバの皮)でペローの昔ばなしを脚色し映画化している。

ペローの昔ばなしを「童話」というように訳すのは誤訳になる。フィリップ・アリエスが『<子供>の誕生』で書いたように「子供」という概念が生まれるのは近代以降のことなのである。子供服というものが生まれるのも18世紀になってからのこと。それ以前には、われわれが思い浮かべる「子供」は、「小さな大人」であったということ。(わたしは、このアリエスの考えに影響されて、大学の卒業設計のコンセプトをまとめた。巌谷國士氏の著書の中にアリエスの名前が出てきて、久しぶりに思い出した。)つまり、ペローの時代に「子供」という概念は存在しなかったのだから、「童話」もなかったことになる。

シュルレアリスムと昔ばなし(メルヘン)が結びつくことは、巌谷氏の著書から教えられたことである。そのことによって、ドゥミの映画を分析する手がかりをつかんだところである。
by kurarc | 2016-04-14 22:08