イザベル・ユペール(Isabelle Huppert)の存在感

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また一人、気になるフランス人の女優をみつけた。イザベル・ユペールである。今まで、なぜ彼女が出演していた映画をみていなかったのか不思議だ。いや、みていたかもしれないが、その特異な存在感に気がつかなかっただけかもしれない。ミヒャエル・ハネケ監督の『ピアニスト』(この映画、ピアニストの方はみない方がよいかもしれない)とクロード・シャブロル監督の『甘い罠』の二つを続けてみて、彼女の魅力に引き込まれた。

存在感といっても、カトリーヌ・ドゥヌーブのような存在感とは全く異なる。ユペールは、美しさが際立つような存在では決してないのだが、上の二つの映画では、ある意味で不気味な普通の女(『ピアニスト』の方は普通とは言えないが)を演じているのである。普通であることと不気味であること、一見全く異なる様態が一つの人間の中に現れることほど恐ろしいことはないと思うが、彼女はそうした有り様を演じることができる稀な女優の一人なのである。

感情を大袈裟に表出するのではなく、心の中に押さえ込めることができる女優、心で演技をすることができる女優であり、むしろ、その演技は日本人の女優の演じ方に近いとも言えるのかもしれない。

ユペールの若いときの映画から、最近の映画までその成長過程を今度じっくりと味わってみたいと思う。

*イザベル・ユペールは、6月24日から開催される『フランス映画祭2016』で来日するという。

by kurarc | 2016-06-05 20:59 | cinema