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伊福部昭著 『音楽入門』を読む

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書店で偶然に出会った新刊本である。こうした新刊との出会いは、なかなか図書館では果たせない。たまには書店に行かなければならないのである。

独学で作曲を学んだという作曲家による音楽史である。映画音楽家とも知られている伊福部は、あのゴジラの映画音楽を作曲したことでも知られている。わたしは、伊福部の著書を読むのは初めてのことであるが、彼の音楽理解に対するスケールの大きさを感じずにはいられなかった。初版が1951年。その後、1985年に改訂版、2003年に新装版が出版。その後、この文庫での出版となる。

壮大な音楽史を、平易に、かつ、音符のような専門家のみにしかわからない記号も使わず、言葉のみによって音楽史を語っている。戦後、間もない頃に出版されているという時代からは想像もつかないほど落ち着いた語り口である。音楽史に詳しくはないが、古代から現代(微分音階主義や線対位主義などに到るまで)まで語り、その後、民族のもつ意義や、音楽と生活について、現代人が感じる音楽への齟齬にまでふれている。

彼のサティの音楽に対する大きな評価が文章からあふれていて、共感すると共に、他の作曲家に対する相対化がしっかりとなされていることにも感心した。こうした偉大な作曲家がゴジラの音楽をつくったとは夢にも思わなかった。

*かつて、病気で入院中に読んだフーゴー・ライヒテントリット著『音楽の歴史と思想』(伊福部の著書とほぼ同時代の著書となる)と比較しながら読むと、音楽史がより深く理解できるようになるだろう。

*伊福部の著書が残念なのは、索引がないこと、参考文献が記されていないことである。こうした著書には最低限、この二つは掲載されるべきであろう。もう一つ、中南米音楽への記述がないことも惜しまれる。
by kurarc | 2016-07-10 17:10 | music