二つの生命 外部と内部の他者

最近、よく耳にするのが「腸内細菌」や「腸内フローラ」という用語である。我々の腸の中には100兆個もの腸内細菌が住みついていて、そのバランスが健康を維持するのに不可欠であることがわかってきたという。

単純に考えると、人間の体内にはもう一つの生命体=細菌が住んでいて、その細菌とうまく付合うことが求められているということになる。その細菌を活性化させるような食物をバランスよく摂取することが必要となる訳である。

つまり、そのことは自分の意志で、これが食べたいとかあれが食べたい、ということとは全く無関係に腸内細菌の欲しい食べ物を摂取しなければならないということを意味する。食べるということは、自分と腸内細菌という二つの生命の欲求を同時に満たすものでなければならない、ということである。

そのように考えるとき、常々、わたしは果たして和食がよいのか疑問に思っている。和食といってわたしが思い描くのは、いわゆる、家庭料理、お袋の味である。ご飯、みそ汁にメインとなるおかずという組み合わせによる和食である。

この3、4年あまり、わたしは自宅で食べる食事について、このパターンの食生活を一切やめることにした。初めにみそ汁を一口飲み、その後、おかずをつつきながらご飯を食べる、という典型的な食べ方を一切やめたのである。

わたしの食べ方はむしろ西洋、特に南欧型の食べ方に近い。初めに野菜スープを飲み、その後、メインのおかずを食べる。食後には、チーズやナッツ類を口にしたり、果物やヨーグルトなどを食べる食べ方である。特に、夜はご飯やパン類、甘いデザートの類いは一切食べない。(これは南欧型とは少し異なる)ポルトガル滞在中は、カルド・ベルデというジャガイモベースのキャベツのスープをまず飲み、その後にメインディッシュを口にするという食べ方をよく行っていたが、その食べ方にならうようになって、随分と体調がよくなった。

そうするようになったのは、わたしの家系は血糖値が高いものが多かったこともあるが、上のような食生活にしてから、腸内環境が改善されたからである。つまり、お通じがよくなったからである。こうした食べ方を一日でも怠ると、腸内環境はすぐにバランスを崩す、ということもわかってきた。

腸内細菌は規則正しい食生活を好むということ、そして、多くの野菜の入ったスープの前菜がお好みのようだということがわかってきたのである。だから、家庭料理は、わたしの意志とは別に、腸内細菌が喜ぶ食物を食べることを最優先に食事のメニューを組み立てることにしたのである。外食においてもできる限り、同様な食事を摂取することに心がけるようになった。

生きるということは、外部の他者=他人、内部の他者=細菌、とうまく付合わなければならないということか。
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by kurarc | 2016-08-15 23:15 | gastronomy