映画『最初の人間』をみる

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イタリア人映画監督、ジャンニ・アメリオの映画『最初の人間』を観た。2012年、岩波ホールで公開された映画だけあり、名画であった。

原作は、カミュの同名最期の小説である。自動車事故で亡くなったカミュの鞄の中から原稿が発見されたという小説であり、その不完全さから出版の是非が多くの知人、近親者によって議論されたあげく、出版にこぎつけた小説だという。わたしは、この小説を読んではいないが、カミュの自伝的小説であるだけに、興味をもった。

カミュの貧しい少年時代と現在(1957年当時)が折り重ねられて描写された映画であり、大きなクライマックスのようなものもなく、淡々と映画が進行していく。少年時代、カミュの同居人には、文字を読める家族がいなかった。母親は病院に勤務していたが、文字が読めなかったため、看護師になることもできなかった。しかし、カミュは友人たちには看護師である、と告げていたらしい。(映画の中での話)

撮影はアルジェで実際に行われた?ようで、アルジェのカズバ(メディナ、旧市街)が登場し、その入り組んだ街路の延長上に地中海がかすかに望まれていた。アルジェリア側から望む地中海は、日本で言えば日本海側と重なり、同じ地中海でも、ヨーロッパ側からの開放性は感じられない。むしろ、理性的な海を感じる。わたしがアルジェの街を歩いたのは、1985年のことだが、映画の中のアルジェの光景は、全く変化がないようであった。

カミュは、彼の才能を察知した小学校時代の恩師ルイ・ジェルマンによって、奨学金の制度を使い、学業を続けられることになった。生まれてすぐに父を失ったカミュは、この教師を第2の父として尊敬し、映画の中にも描かれている。ノーベル賞を受賞した翌日、ルイ宛に手紙を書いており、その手紙は、小説『最初の人間』の中に補遺として収録されている。

最後に、この映画音楽を担当したフランコ・ピエルサンティの音楽が、当時のアルジェリアの状況やアルジェリア側から望む地中海の様相(わたし個人の勝手な主観であるが)を巧みに表現していることに好感がもてた。

by kurarc | 2016-08-28 10:56