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建築の中のカオス

お手伝いしている大規模な建築がかたちをなしてきた。この現場に通いだしておよそ1年7ヶ月が経過し、竣工を今月末にひかえ、様々な想念が頭の中を駆け巡っている。その中で最も強く印象づけられたのは、建築がカオスから秩序づけられ、かたちづくられていく様である。

住宅のような小さい建築の仕事からは、そのような印象は現れないが、竣工前の6ヶ月くらいは未だにかたちのみえない化け物のような様相の物体が、3ヶ月前、1ヶ月前と竣工に近づくにつれて、かたちが現れ、カオスから秩序を持ったかたちへと収束していく。建築に携わり、この時を迎えられるのをずっと待ち望んでいた。

建築をつくるとは、いわば先の見えないトンネルを掘り続け、ある時期にふと明かりが見え始める、そんな仕事なのである。その明かりが見えるまで、暗闇の中を少しづつ歩いていかなくてはならない根気のいる仕事である。

古来、巨大な建築を建設してきた権力者たちは、巨大な建築がもつこうしたカオスを利用してきたのだと思われる。労働者をカオスの中に導き、そのカオスから抜け出させるために、膨大な労働を強いる。労働者に目標と理想を与え、カオス的様相をもつ人間の意思を一つの方向に向かわせたのであろう。人は、建築に参加することで、一つになる。

そして、こうした統一は、巨大な建築でなければなし得ない。ピラミッドや様々な神殿、宗教建築が巨大であることは偶然ではない。権力者たちは巨大でなければならないことを理解していたのである。現在、権力者のかたちも変化したが、建築に携わる人間とものとの格闘は、今も昔も変わらないのだと思う。巨大な建築の中で、人は何千年も前のカオスと同じ経験を味わうことになる。

わたしは巨大な建築からずっと遠ざかってきたものであるが、今回、このプロジェクトに参加できた経験から、建築を全く今までとは異なる視点で考えられるようになった。建築は一つの世界ではないのである。やはり、いろいろ体験することは人を変えてくれるものである。

by kurarc | 2017-01-14 23:12