ポルトガル、そして柄本祐さん

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仕事から帰り、テレビをつけると、俳優の柄本祐さんがポルトガルを訪ねる番組があらわれた。テレビ番組を見てチャンネルを選択した訳ではない。こうした偶然にも驚かされるが、柄本さんのポルトガルへの情熱、特に心酔するというオリベイラ監督への思いにも驚かされた。

リスボン、ポルト、ギマランエス(ギマランイシュ)が映し出された。ポルトのドウロ河沿いはわたしが滞在していた頃とかなり変化したように思った。ポルトを古都と紹介していたが、わたしが古都と感じるのはギマランエスの方である。特に、この街の夜はよい。わたしはこの街で夜入ったレストランが未だに忘れられない。路地に面し、外の明かりがレストラン内にやさしく届く光景が。レストランで食事をすることの意味はこうした場所で食べることなのだ、と感じさせてくれた。ここだけではない。ポルトガルのレストランはこのギマランエスに限らず、食べることと場所との関係を大切にしている。

柄本さんは、映画「階段通りの人々」の舞台となった階段、バルのあたりを訪ねていた。わたしもこの映画の印象が強く、リスボン滞在中に訪ねたことがある。といっても、わたしもリスボンを歩いていて偶然に見つけた。リスボンの中心バイシャ地区の東寄りに位置するサン・ジョルジョ城へ向かう階段である。リスボンに数多くある階段(あるいは坂道)は、どれも舞台となるような芸術である。それも、誰もがいつでもそこを通ることができる。都市の中で開かれた芸術のようなものといっていい。

柄本さんのような若者がポルトガルが好きだと言うのにはやはり驚かされる。この国、都市の良さはあまり多くの人には伝わらないと思えるからである。手短に言えば、都市であることは、およそ人を無名にしてしまうものだが、ポルトガルの都市は都市でありながら、自分が誰であるのかを失わない、そこがポルトガルの都市の良さということである。

普通はパリやバルセロナ、ローマがよいという人が大半であろう。柄本さんのようなポルトガル好きはそんなに多くなくてよい。ポルトガル人も誰もパリのような街になることを望んでもいない。ポルトガル好きを大声で叫ぶ必要もない。ポルトガル好きは静かに好きであればよいのである。



by kurarc | 2017-02-18 09:16 | Portugal