パット・メセニー音楽のブラス・バージョンへの期待

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月に1度、トランペットを学んでいる先生の属するオーケストラの音楽を聴く機会があった。ブラジル音楽をトランペットやアルトサックスといった管楽器と、ギター、ベース、パーカッションの編成で演奏するオーケストラである。その中で、パット・メセニーがちょうど30年前に発表した名盤『STILL life(talking)』の中の曲”(IT'S JUST) TALK"のブラスヴァージョンを聴くことができたのだが、これが非常によかったのである。

パット・メセニーは、このCDを発表した1987年以前、ECMから『FIRST CIRCLE』というアルバムを発表しているが、CD全体のできは統一感がなく、中途半端な仕上がりとなっていた。ただ、”THE FIRST CIRCLE "という曲で、声を大胆に曲の中に取り入れる『STILL life(talking)』につながるような曲のイメージをつかんでいたように思う。中南米音楽、特にブラジル音楽のとの接近である。

その手がかりをもとに、『STILL life(talking)』ではバンドの音楽というフレームから抜け出し、サウンドスケープと言えるような風景、環境のようなものを音楽に結実させたのである。1曲目のタイトル”MINUANO(68)"が直接示すように、冬の季節風を意味するブラジル・ポルトガル語を使い、ブラジル音楽との関係を明確に表現しようとした。

このCDを聴いて、以前のCDとの大きな違いはドラムの音が繊細になり、むしろパーカッションの一部と扱われたことであろう。無造作な8ビートの曲などはもちろん含まれない。ドラムの音は軽くなり、リズムの波は穏やかに変化した。改めてこのCDを聴き返すと、全体のコンセプトのようなものがはっきりと感じられて、名盤であることがわかる。このCDによって、新しいパットの音楽が旅立った記念すべき1枚となっている。

そして、彼の音楽のブラス化に今後も期待したい。作曲家たちは、アニメソングだの、歌謡曲をブラスバンド用に編曲することはよくやるのに、パットの音楽をなぜ用いないのだろう?

by kurarc | 2017-03-11 11:33 | music