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映画『霧の中の風景』再見

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10年ぶりくらいにアンゲロプロス監督の映画『霧の中の風景』を観る。映画音楽や象徴的なシーンの印象だけは強く残っていたが、各々のシーンなど細部についてはほとんど忘れかけていた。映画は忘れるからまた観たくなるのである。

結論から言うと、こんなによい映画だったのか、と改めて感じた。1988年の映画とは思えず、古めかしい感じは全くない、普遍的な映画である。アンゲロプロスは自分の子供のためのおとぎ話をつくりたかった、ということだが、もちろん、生やさしいおとぎ話ではない。

手短に言えば、姉弟が不在の父をドイツに探しにいく、というロードムービーである。父はドイツにいないのだが、その父がドイツにいるということを信じて、幼い姉弟が旅をする。その過程で、姉は少女から恋を経験して大人に近づいていく。特に、わたしは今回、この姉の心の動きに注目して映画を観た。

字幕を担当した池澤夏樹さんは、この映画は物語ではなく、詩で構成されていることを指摘している。その点、わたしも同意するが、今回わたしは、アンゲロプロスの映画がシュルレアリスムの影響を大きく受けていることを感じた(誰もが感じることだろう)。彼の映画とシュルレアリスムとの接点を指摘している批評家はいるのだろうか?わたしは、そうした批評に今まで出会ったことはない。

この映画を観ていて、映画『エル・スール』(1983年)が頭をよぎった。共に子供たちの演技の光る映画である。子供たちが重いものを背負っていることも共通している。もしかしたら、アンゲロプロスは映画『エル・スール』の影響を受けていたのかもしれない。



by kurarc | 2017-04-02 23:36 | cinema