ピアソラの名曲 ”REMEMBRANCE"

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ピアソラの担当した映画音楽の中でも、映画『ENRICO Ⅳ(エンリコ4世)』の音楽はどれも名曲ばかりである。2年ほど前にもこのブログで取り上げたが、やはり私は”REMEMBRANCE"がもっともよい。ピアソラの曲のエッセンスをすべて持ち合わせたような名曲である。

映画の冒頭、確か列車(車?)の中から外部の風景が流れていくシーンとこのゆったりとした曲の対比がよく、そのシーンだけで映画に釘付けにされてしまった。ジャック・ドゥミの『天使の入江』の冒頭のシーンと同じような感覚である。

”REMEMBRANCE"という曲だけが英語のタイトルなのだが、これは一体なぜだろうかと気になり、わたしなりの結論を出してみた。”REMEMBRANCE"の動詞”REMEMBER"の語源は、古ラテン語であり、その言語は古フランス語に受け継がれていた。つまり、イタリア語には、この語に直接対応する言葉がない。強いて言えば、”MEMORIA”だが、これを監督のマルコ・ベロッキオは気に入らなかった。ラテン語の起源を暗示する言葉を使用したいし、イタリア映画なのでフランス語を使う訳にもいかず、最終的に英語を選択した、というのがわたしの想像である。

この映画はまだ一度しか観ていない。記憶と忘却をテーマとしたような映画。2015年にやっとDVD化されたようなので、再度音楽を楽しみながらじっくりと味わいたい映画である。

*”REMEMBER"は「再び+心にかける」が原義。”MEMORIA”の方は、いわゆる「思い出すこと」が原義。この微妙な原義の差異がベロッキオ監督にとって重要であったということか。

*この映画の最大のテーマは、ENRICO Ⅳ(エンリコ4世)という狂人を前にして、人はいかに振る舞うのか、ということ。狂人を面白がるもの、必死に治そうとするもの、あるものは道化を演じるものetc. 狂人を前に人は我を失ってしまうということだ。そして、マルコ・ベッキオが狂人として描いたものは何を意味してたのか、それは明白だろう。

by kurarc | 2017-05-09 16:31 | cinema