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小林秀雄 『近代繪畫』

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先日、藤沢の古本屋に行ったとき、そのご主人から小林秀雄作の小説『一つの脳髄』初版本を見せていただいた。小林の唯一の小説ということである。わたしは読んだことはないが、不思議なことに、小林秀雄全集の中には所収されていない。

小林秀雄の著作は中学生の頃、『考えるヒント』、『無常ということ』などが流行って読んだが、実は熱心に読んだことはなった。いい歳をしていて恥ずかしい限りである。小林の著書がその後気になり、『近代繪畫』という著書を手に取った。わたしにとって最も親しみやすい内容と思えたからである。以前、と言っても何十年も前に、ざっと目を通したように思うが、内容は思い出せない。

『近代繪畫』というタイトルであるが、最初に「ボードレール」から書き始められている律儀さは小林らしい。近代の絵画を描くにあたり、ボードレールは避けて通れないという訳である。ボードレールが試みた「詩の近代性」と「絵画の近代性」とをパラレルなものと見ているということだが、残念なのは、その後に取り上がられる画家たちの中に、クールべが含まれていないことである。ボードレールの章であっさりと彼の意義についてふれて、すぐにモネへと移行している。(このあたりが、研究者と批評家の違いであろうか)

それはさておき、ボードレールの章に目を通したが、小林の近代絵画に対する認識の明快さには驚かされた。わたしは小林が個々の画家をどのように解釈し認識しているのかより、「近代」という言葉の中にどのような含意、パースペクティブを込めているのかを知りたいと思っている。まだ読み始めたばかりなので、後日、そのことについてメモすることにしよう。

by kurarc | 2017-05-30 00:29 | books