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ルイージ・ピランデッロ シチリアのカラス

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先日、ルイージ・ピランデッロの戯曲を原作とした映画『ENRICO Ⅳ』を観直した。その他、わたしが知っているものでピランデッロを原作とした映画は『カオス・シチリア物語』がある。特に、『カオス・シチリア物語』は、度々観直したくなる映画である。

1985年1月24日から29日まで、短期間だがシチリアを旅したことがある。ピランデッロの故郷アグリジェントも一日過ごした。もちろん、このとき、アグリジェントがピランデッロの故郷(正確にはアグリジェントから4キロほど離れたカオスという街が故郷)であるなどまったく知る由もなかった。

一度訪ねた土地という実感があるせいか、ピランデッロという作家はいつもどこか頭の片隅にある。それはもちろん名画『カオス・シチリア物語』の原作者であることも大きいが、彼の短編などを少しずつ読んでいるうちに、なおさら気になる作家になってきたのである。さらに、ピランデッロがなぜファシスト党に入党したのかについても気になっていた。

竹山博英著『シチリア 神々とマフィアの島』の中に、ピランデッロについての小論(「硫黄鉱山と文学 ピランデッロ」)があるが、その中にピランデッロを理解する手がかりが書いてある。ピランデッロの父はガベッロットと言われる鉱山管理者であったが、鉱山労働者に過重労働を課し、利益を得るマフィア的な人物であった。こうした父への反抗が彼の文学への出発点となっているようだ。その一方、経済的には裕福であったこともあり、父からの仕送りによって学問を続けられたという矛盾にも悩まされたのだろう。そうした屈折した父親像を常に内面に持っていたピランデッロは、ずっと大人になりきれず、父性の象徴としてのムッソリーニに傾倒していくことになったのだと、竹山は書いている。

ピランデッロの短編に、「月を見つけたチャウラ」がある。この短編は、鉱山労働者チャウラ(シチリア方言でカラスを意味する)が過酷な労働の中で、大きな月との感動的な出会いを描いた短編である。映画『カオス・シチリア物語』の中にも登場するカラスは、ピランデッロの作品の中で度々登場する生き物である。それが何を意味するのか、わたしにはまだはっきりわからないが、なんとなく感じとっている。

*ピランデッロの短編選集、『月を見つけたチャウラ ピランデッロ短編集』(関口英子訳)は、第1回須賀敦子翻訳賞を受賞している。

*ピランデッロの原作を映画化したもののリストが『月を見つけたチャウラ ピランデッロ短編集』(関口英子訳)のあとがきに書いてあったので、メモしておく。

・『カオス・シチリア物語』(タヴィアー二兄弟)
・『笑う男』(タヴィアー二兄弟)
・『旅路』(デ・シーカ監督)
・『乳母』(マルコ・ベロッキオ監督)
・『ENRICO Ⅳ』(マルコ・ベロッキオ監督)・・・わたしが追加
・『花をくわえた男』

by kurarc | 2017-06-05 19:16 | books