椅子の座高について

建築家、デザイナーの中には、建築の中での視線を低くする(落とす)ことに執着するものがいる。テーブルの高さを通常の高さ700mm〜720mmより低くして650mm程度まで下げ、それに合わせて椅子のデザインも考える、というように。

こうしたデザインは一部の世界でもてはやされる。建築の空間自体の重心が下がり、安定感を与えるためである。天井高さを限界まで下げようとするデザインなどもこうした試みの一つと言っていい。

こうしたデザインの試みは、一方で独りよがりであり、健常者を対象としたデザインとも言えるのである。最近、福祉施設の設計をやったこともあり、特にそのように感じられる。例えば、高齢者用の便器は、通常の便器の高さよりも高い。座りやすく、立ち上がりやすいようにである。高齢者になれば、深く椅子に腰掛けることは、腰に負担がかかるし、立ち上がろうとするにも困難を伴うことになる。椅子の座高を低く設定することは高齢者には身体に対する負担が大きいことになる。

ヨーロッパの椅子の座高は、通常450mm以上と高い。それは、室内でも靴を履くことから説明されてきたが、もしかしたら、そうではなく、座ることと立ち上がることを考慮した結果ではないか、とも考えられる。イタリア人などは、日本人と体格の差はほとんどない。にも関わらずこうした寸法を与えることは必然性があるに違いない。(イタリアは、テーブルの高さも非常に高い。)

何が言いたいのかというと、デザイナーは自分の美学のようなものだけでデザインして良いのか?ということである。デザイナーの大半はそのような人ばかりだ。美しいもの、かっこいい方へ向かう。それは果たして良い結果を生むのだろうか?

最近、デザイナーによるプロダクト商品が随分と出回るようになった。良いものもあるが、粗製乱造品も多い。名の知られたデザイナーのものでも、つくりが雑なものが多いことも事実である。それより、デザインなどどうでも良いから機能が優れているもの、長持ちするものも良い、と思う。両立することがベストであるが、意外と両立するものは少ない。これが現在の日本のデザインの現状ではないか。

*下はモンベルのキャンプ用フォールディングチェア。最近購入したもの。正直、デザインはよくないが、機能性は抜群に良い。安価で、軽く、室内で使用するにも床を傷めない。5cm厚のクッションを使えば、通常の椅子として十分使用できる。座り心地も良い。

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by kurarc | 2017-06-06 12:02 | design

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