『ペソアと歩くリスボン』(F・ペソア著、近藤紀子訳)を読む

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タイトルは、20世紀を代表するポルトガルの前衛詩人、フェルナンド・ペソアが、1925年に英文で書いたリスボンのガイドブックである。原題は、「LISBOA what the tourist should see-旅人はリスボンの何を見るべきか」。このペソアの思い入れのを込めたリスボンのガイドブックは、1999年にすでに近藤氏により訳されていたが、拾い読みしていた程度で、精読してはいなかった。今回、初めから終わりまで丁寧に読み進めた。

ポルトガル滞在時に、すでにこの原書(英文とポルトガル語併記)は買ってあって、積読状態であったが、改めて読んでみるとペソアのこだわりがよくわかるガイドブックとなっている。

実はこのガイドブックは、ペソア生誕100周年に当たる1988年に発見されたもので、その経緯については、この書物の中にテレーザ・リタ・ロペス教授によって記されている。実は、このロペス教授の文章は重要で、このガイドの指向性について示してくれている。ペソアは、かなりナショナリズムの動機があり、このガイドを書き記しているという指向性である。ペソアと同期のモデルニスタたちが海外の文化を吸収していくのに対し、ペソアは、自国の文化を輸出すること、知らせるために書かれた、とロペス教授は記している。

わたしにとってこのガイドブックが貴重なのは、かなり建築や建築家の記述にページを費やしている(その他、文学者、芸術家たちも)ということである。できればその一つ一つに詳細な訳注が欲しかったところだが、日本の西洋建築史家でも、きっと初めて聞くような建築家たちの名前が列挙されていることもあり、現時点では無理と言えるだろう。

このガイドブックを読んだ限り、彼は遊歩の詩人であったことがよくわかる。リスボン、及びその周辺の都市をくまなく歩き込んでいたことが伝わってくる。1925年に書かれたこともあり、リスボンに船でやってくる旅人を想定しているが、現在であれば、リスボン国際空港、または、サンタ・アポローニャ駅から書き始めなければならないだろう。

かなりマニアックなガイドブックであるが、そもそもポルトガルを旅する人自体、マニアックな方々が多いのだろうから、こうしたガイドブックを頼りに、ペソアの軌跡を辿ってみるのも興味深いことに違いない。



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by kurarc | 2017-09-25 17:51 | books

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