映画『ジャック・ドゥミの少年期』を観る

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映画監督ジャック・ドゥミが少年から映画学校へ入るまでの物語を妻である映画監督アニエス・ヴァルダが撮影した映画が『ジャック・ドゥミの少年期』(原題:ナントのジャコ(ジャコはジャックの少年期の愛称))である。この映画の物語が真実に近いものであるならば、その後彼が発表する映画は、彼の少年期の様々な経験の中にすでに含まれていたと言える。

それが真実なのか創作なのかはむしろ問題ではないかもしれない。この映画では、ジャコが少年期の夢をそのまま一生涯の仕事にしてしまった物語が語られる。この映画を観ながら、ふと自分の少年期のことが思い出された。小学生の時に建築をやろうと思ったこと、小学生の頃住んでいた町工場のこと、である。わたしの実家は半分が町工場であり、普通の住宅ではなかった。玄関はなく、工場にまず入るのである。入るとすぐ頭上には工場で働く職人さんがセルフビルドでつくった昼寝用のスペース(4畳間ほど)である中二階があった。

現在進めている仕事で事務室の中に宙に浮いた吊り戸棚があるが、考えてみたらわたしの少年期に暮らした町工場の空間(中二階)とそっくりではないか。もちろん、この吊り戸棚は小屋裏収納がつくれないことからの苦肉の作ではあったのだが、わたしの頭の中にこうした吊り戸棚という回答がすぐに思い浮かんだのも少年期の町工場の空間を経験していたからかもしれない。

ジャコの映画は、映画をつくるための生涯であった、と考えるとわかりやすい。彼は10代までに経験したことを映画にするだけでよかったのであるが、そうした経験を映画という作品に孵化させることは並大抵の苦労ではなかったはずである。そのことをもっとも近くにいてわかっていたのがこの映画をつくった妻ヴァルダであったのだろう。ジャコはこの映画の撮影中、すでに難病に侵されていた。彼女はそうした苦労を語ることなく、ジャコの少年期の輝きを映画にした。そして、ジャコは少年のまま亡くなっていったのである。

*下写真は、ジャコを演じた子役たちとジャック・ドゥミ(右)。
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by kurarc | 2017-11-18 00:02 | cinema

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