黒沢清監督 映画『散歩する侵略者』

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タイトルを見たとき、この映画を観たくなった。原作も同名。原作者は前川知大氏。劇団イキウメを拠点として活動されているという。黒沢清監督の映画を注目するようになったのは、『ダゲレオタイプの女』からである。本当に最近のことになる。生意気なことを言えば、100点をつけたくなるような映画ではないが、90点はつけたい、そういう映画をいつも見せてくれる、それが黒沢監督である。同時代の日本の映画監督で90点をつけたくなる監督は、今のところ、黒沢監督しかわたしは思い当たらない。

映画『散歩する侵略者』は人によって様々なテーマが思い浮かぶだろう。わたしはこの映画が極めて政治的な映画であると思った。ある人は愛をテーマとしていると思うだろうが、わたしには愛をテーマとしているというには少し弱い。この場合、愛はオブラートであり、その中身は政治ではないか?黒沢監督はもちろん、様々なテーマを重ね合わせているというだろうが、わたしには政治映画として強く意識された。

タイトルが秀逸である。我々のまわりには様々な「侵略者」が忍び寄っている。それは、都市の中、日常に潜んでいる。そういう感覚のタイトルである。映画では侵略者は宇宙人となっているが、この映画では映画が進むにつれ、侵略者とは宇宙人ではないことに気がつくのである。そのことが政治映画であるとみなす理由である。残念ながら愛の描き方は今ひとつ稚拙で、説得力に欠けた。そこの詰めが完璧ならば、この映画は日本映画の中で相当な高得点を与えることができそうである。

by kurarc | 2017-12-25 22:35 | cinema