台湾映画『言えない秘密』

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台湾映画『言えない秘密』は、青春もののファンタジー映画としては出色のできであった。

監督ほか脚本、主演、音楽をも担当したジェイ・チョウは、そのどこにでもいそうな普通の青年(映画ではピアノの天才的プレーヤーだが)を演じるにはちょうどよい風貌であり、力の抜けた演技は、この映画の青年の役を考えたとき、納得できる演じ方であった。

もう一人の主演を演じたグイ・ルンメイは、映画の前半と後半で全くことなる心理状態を演じ分けなければならない重要な役であり、その対比を見事に演じ分けていた。

この映画を見終わると考えるのは、出会いと別れである。人は様々な出会いと別れを繰り返すが、それはなぜなのか?死は絶対的な別れであるが、別れはそれだけではない。生きている間、別れは度々訪れる。親しい友との別れ、恋人との別れ、一緒に働いた人との別れ・・・と数限りない出会いと別れの繰り返しである。

この映画では初恋の人との別れを描いているが、その初恋の人には思いがけない秘密が隠されていた・・・

台湾の淡水(淡水は、東京から言えば湘南の感じであろうか?)を舞台としたこの映画はその風景も映画の主題と重なる。西洋的なデザインであってもどこかなつかしい学校建築や海辺の風景、坂道の描写など、日本人にはその空間から郷愁を共感できる。

グイ・ルンメイの出演する映画を集中して観ているが、どうしてなのかこの映画を観てやっと気づかされた。髪型といい、風貌といい、中学生の頃、気になっていた女の子に似ていたからである。

*この映画は、過去から来た少女との出会いと別れを描いたもの。時を超えた恋を描いたものといえる。現実にはあり得ないことかもしれないが、今会っている人間が現在の人であり、過去からやってきた人、あるいは未来からやってきた人ではないとどうやって証明できよう?少なくと人間は、両親の遺伝子を受け継いでいるのだから、すべての人間は過去からなんらかの情報を受け継いでいると考えられる。また、この映画は死後の世界をも表現しているとみなせる。シャンルンは死ぬことによって、シャオユーと再会できることを知っていたから、彼は自ら死を選んだのだろう。

*この映画は上に述べたことだけではない。様々な主題が重ね合わさっている。「秘密」をキーワードとすれば、シャオユーは、シャンルンの父が秘密を守らなかったために、悲劇を迎えること、つまり、秘密の大切さを教えているとみなすことができる。また、シャオユーの言葉の中に、「同じ歌が好きな人を見つけた」というような台詞があるように、同じ歌(音楽)の好きな人との共感を主題としているとも捉えられる。

*この映画が封切られたのは10年前。なぜこのような魅力的な映画をその時点で観ることができなかったのか?映画のよいところは、その10年という空白を映画を観ることによって感じ取れること。映画とは、時間に対する郷愁を楽しむものでもあり、常に不完全な過去からの贈り物である。



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by kurarc | 2018-09-19 14:47

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