映画『軍中楽園』

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映画『軍中楽園』は非情に興味深い映画であった。金門島に実在した「特約茶室」と呼ばれる娼館を舞台とした映画である。この中で繰り広げられる男女4人を中心とした悲哀の物語。

映画としての完成度は高く、今年観た映画の中で、最も楽しめた映画であった。金門島という台湾の特異点とも言える場所を恥ずかしながら初めて知ったが、この場所で行われた台湾、国民党軍の訓練についても初めて認識させられた。

この映画では注意深さが必要であると、青井哲人氏(明治大教授)が指摘するように、この物語は台湾の外省人に偏った物語であるということである。男女4人の内、3名が外省人として想定され、その外省人の悲哀と喪失観が強調され、美化されている、と青井氏は指摘する。そうした細部を読み込むためには、台湾の民族性に熟知していなければならない。

それにしても、そうした細部に目をつぶる訳にはいかないが、映画としての出来はすばらしいものであった。特に映像と映像のつなぎが絶妙であり、退屈しないし、喜劇と悲劇がうまく共存している。また、特に注意をひいたのは、娼婦を演じたレジーナ・ワンの抑制された演技である。この映画の中で最も光っていたと思われる。

台湾は魅力的な世界であるが、その民族の混交した社会を理解するのは容易なことではない。映画の中で悲哀を悲哀としてぼーっと眺めていることは許されないのである。その悲哀がどのような立場の人間から発せられているのかについて常に意識していなければ、大きな誤解を生みかねないということである。

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by kurarc | 2018-10-16 22:38

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