映画『PORTO』

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ジム・ジャームッシュ製作総指揮による映画『PORTO(ポルト)』を鑑賞。結論から言えば、この映画は、リスボンで撮影されたアラン・タネールの映画『白い町で』(1983年)のポルト版といえるものではないか、ということ。

この映画で再認識したのが、ポルトの都市(まち)の美しさである。この映画を観ていただくと、ポルトガルの都市が他のヨーロッパの都市とは異なる様相を帯びている、ということがわかるのではないだろうか。それは、霧がかかっていなくとも、霧に覆われたような都市、むしろ東欧諸国の都市の様相に近似しているのかもしれない。

映画に登場する"CAFE Ceuta"はどうみても21世紀のカフェとは思えない。それは日本で言うと昭和のイメージであり、1950年代くらいの雰囲気を漂わせる。"Ceuta"(セウタ)とは、ポルトガルがアフリカの植民地活動に乗り出したときに初めて足がかりとし、攻略した都市であり、現在はスペイン領となっている。わたしもモロッコへの旅はこの都市へスペイン、アルヘシラスから船で渡ることから始まった。

この映画は、アメリカ人(男)とフランス人(女)のラブストーリーだが、こうした物語はポルトガルや他のヨーロッパの都市においてもリアリティがある。様々なルーツの異なる人々が交錯し、そこから恋愛がうまれることはヨーロッパでは日常茶飯事だからである。そういった意味ではごく普通の物語なのだが、実は、この映画の主人公はポルトという都市なのである。『白い町で』もそうであったが、1980年代初期のリスボンという都市の暗さを映画の中でよく表現していた。人はその時代の都市という霧の中に包まれてしまう存在であり、都市という舞台から抜け出す訳にはいかないのだと思う。ポルトというポルトガル特有の濃霧状の都市の中で、男女は「ポルトのような」愛を交わすしかできないのであろう。この映画は、『白い町で』ほどの後味の悪さはないが、それに近い余韻を残して終わる。

時間の流れを感じさせない都市、時が止まったような都市ポルト。恋愛にはふさわしい都市と言えるのかもしれない。


by kurarc | 2018-10-20 00:44 | cinema