台湾映画『遠い道のり』

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不思議な映画であった。ストーリーのようなものはない。不倫をする女性(写真:この女性を演じたグイ・ルンメイ)、別れた恋人に台湾の東海岸の音をカセットテープに録音し送り続ける録音技師の男性、精神を病んだ精神科医の3人の生活が同時に進行する。カセットテープは、たまたま別れた男性の彼女が住んでいたアパートに不倫する女性が住んでいて、その女性が封を開け、その音に興味をひかれる。この3人がどのような接点をもつようになるのかが気になってくる。男と精神科医は偶然に出会うのだが、女性の方はどうなるのか?

この映画はこうしたひと癖ある男二人、女一人がそれぞれ台湾の東海岸へ旅をすることになる。そして、その美しい風景に最終的には救われるような流れとなるが、本当に救われたのかどうかはわからない。多くの余韻を残してラストシーンを迎える。

台湾映画をこのところ続けて観ているが、少し気になってきたのは、ヨーロッパ映画から引用されたと思われるシーンの展開の仕方である。この映画ではテープ(音)を届けるというシーンは、たとえば、わたしの好きな映画『ふたりのベロニカ』で重要なシーンとして展開されている。台湾映画を観ているとこうしたヨーロッパ映画からのヒントを映画にしている場面が数多く見受けられる。引用の仕方の成功しているものもあり、失敗しているものもある。引用することはどのような名画にもあるので、悪いことではないが、その引用の仕方のセンスは問われることになる。

この映画で特によかったのはラストシーンの後に流れる音楽である。ARA KINBOというミュージシャンだが、ファドのような情感を感じる歌声。台湾音楽も奥が深そうである。


*16世紀、ポルトガル人が台湾近海を通過し、台湾の自然豊かな情景をみたとき「formosa」(ファルモーサ 美しいの意)と呼んだ、といったことが台湾に関する本を読むと出てくるが、発音は「フォルモーザ」である。この映画でもこの言葉が印象深く使用されている。



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by kurarc | 2018-11-05 23:55 | cinema

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