ロラン・バルト著 『エッフェル塔』

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ロラン・バルト著の『エッフェル塔』を30数年ぶりに読み返した。これほど優れた名訳であったかと驚いたことと、初めて読んだときにあまり面白みを感じなかったと思うが、今回はこんなに楽しい書物であったのか、と一気に読んでしまう。

モーパッサンのエッフェル塔嫌いの紹介からはじまるこの小論は、バルトがエッフェル塔を経験することから湧き上がるイメージ、すなわち、歴史、自然、テクノロジー、パノラマ的視線、19世紀、動物から植物etc.を一気に書き留めたような小論であり、きっと、短時間にまとめ上げたものに違いない。

エッフェル塔という一つの塔からバルト流のエクリチュールがあふれ出したような小論は、興味が尽きない。エッフェル塔が「記念碑の零度」を実現していることが重要だとするバルトらしい発見、そのことが「過去の聖なる重さを振り払い、歴史の呪縛力への犯行と破壊行為」であることをバルトは見抜いている。

しかし、建築を生業とするものからみると、バルトが語り尽くしていないこと、それは、この構築物をいかにデザイン、設計していったのか、そのことがわたしはもっとも興味あることだが、バルトはそこまでは語られない。つまり、その部分は建築家、または建築史家が語らなければならない宿題であると思われた。

モーパッサンはエッフェル塔が嫌いなため、エッフェル塔のレストランで食事をしたという。ここがパリでエッフェル塔を見ないですむ唯一の場所だからだと。しかし、エッフェル塔は見るに値する塔であることはすでに明らかとなった。それはエッフェルがもちろん確信していたことである。

*エッフェル塔を実際に設計し、構造の検討を行ったのは、ステファン・ソーヴェストル(建築家)とモーリス・ケクラン(構造家)である。

by kurarc | 2018-12-22 17:59 | books