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『花筐』 映画と小説

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大林宣彦監督の映画を続けて観ている。映画『花筐(はながたみ)』(小説では「はなかたみ」と読ませている)は、大林監督が原作者の檀一雄に直接会い、檀に映画化の快諾を受けていたものだという。映画化には旬というものがあるのだそうだ。大林監督は快諾はいただいていたものの、この戦争をテーマとした小説を映画化するには時代があまりにも平和ぼけしはじめた時期であったこともあり、ずっと映画化をためらっていたのだという。そして、この映画化に踏み切ったのは、例の3.11という悲劇があったためであった。

わたしは映画を観てから小説を読んだが、映画は大林監督の脚色もあり、それはそれで興味深く、また、小説は、何か戦争がこれからはじまるという時代の十代の若者たちを取り上げたものだが、その艶めかしさは、単に戦争をテーマとした小説というより、むしろ、戦争を副題とした青春期の男女の愛と友情が主題となっており、さらに、小説内に描かれた色彩や匂い、光や風、海への景観など、様々な要素が生々しく想像できるような不思議なテイストをもつ小説であり、今までに経験したことのない小説という印象であった。その生々しさは、ガルシア・マルケスのような中南米の小説とも異なる。(映画では、檀のアドバイスもあり、唐津を舞台に選定している)

日本人の小説を読んだのは久しぶりのことだが、檀一雄がこうした小説を書いていたとは知らなかった。三島由紀夫はこの小説を読んで、作家になりたいと思ったと言われているそうだが、この小説は、ポルトガル、スペイン、オランダなど異国と交流の深い九州の文化的コンテクストなしには生み出されなかったような小説ではないかと感じられた。


by kurarc | 2019-04-25 00:21 | books