人気ブログランキング |

『時がつくる建築 リノベーションの西洋建築史』(加藤耕一著)

b0074416_22161551.jpg

建築世界では、リノベーションという行為が常識化してきたが、本書は西洋建築史の中にその過程を整理したものである。興味深い内容であったこともあり、一気に読んでしまう。近年、建築と時間を主題とした著書の出版が続いているが、この著書はその中でも内容が明解であり、大変読みやすい。

主にルネサンス以降の建築を、再利用的建築観、再開発的建築観、文化財的建築観という3つの主題ごとに建築史を切断し、それぞれ、その建築観を考えるときに中心となる建築や建築家を登場させて論じている。

たとえば、アンドレ・パッラーディオは再開発的建築観の中で登場する。パッラーディオによるヴィチェンツァのバシリカは、既存再利用の仕事ではあったが、パッラーディオの『建築四書』という著作の中で、そうした既存に関わる仕事であることが隠蔽され、「理念的」、「理想的」な計画として論じられていることを指摘し、「時間殺し」を行い、施工や構築の問題を締め出したことに言及している。

また、本書5章で、わたしがポルトガル滞在中に訪れたトリノ郊外のリーヴォリ城(下写真)の修復工事についても言及されていたことには驚いた。わたしはこの修復工事に感激し、この修復を指揮した建築家アンドレア・ブルーノの著作を購入していた。この仕事は、非常に優れた仕事であると思われたが、日本に帰ってから、この仕事について論じられているような書物や文章に出会っていなかった。この著書の5章注のなかで、フランスの建築家、建築史家であるドミニク・ルイヤールは、2013年に発表された論文の中で、1978年に起こった4つの重要な出来事のうちの一つに、このブルーノの仕事を含めていることを知り、やっとこの仕事の意義について確信できたのである。

建築の保存、修復、再利用など、建築と時間、建築と記憶などについて考えるとき、本書はそのパースペクティブを明確に示してくれているという点で、非常に優れた著書である。

b0074416_22164097.jpg



by kurarc | 2019-05-06 22:16 | books