30年前

T事件から30年が経過したという。未だに真実は明らかにされていないというが、テレビのドキュメンタリー番組で、おおまかではあるが詳細が明らかにされている。SNSもなく、携帯電話もスマホもない時代であったこともあり、市民の間でも情報は限られている。わたしと同世代の若者たちが何百人も殺された事件であった。

1989年、わたしはちょうど大学院に入学した年であった。その2年ほど前に父親が死去していた。父は歳をとっていたからわたしは普通の子供より早く父親を亡くすだろうとは思っていたが、予想外にそれは早く訪れた。父の死のせいか、なにかもう一度建築を学習し直さなければという漠然とした考えが浮かび、3月入試を行っていた大学(当時は2大学しかなかった)を選び、大学院に入学した。

先日、久しぶりに沖縄を訪れたが、T事件を振り返るとき、いつもこの沖縄での悲劇、沖縄戦について著された大田昌秀氏の著書を思わずにはいられない。沖縄在住時に購入した大田昌秀著の『沖縄戦とは何か』の最後に、大田は「軍隊は、民衆を守るものではない」という結論を述べて終わる。T事件とはまさに、その結論を証明したような事件であった。1989年は、今思えば21世紀がはじまった年であったのかもしれない。



by kurarc | 2019-06-09 21:56 | saudade-memoria