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ルッカ 円形闘技場遺構の転用

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ルッカを訪れたのは、1984年10月21日のことである。フィレンツェから日帰りでこの都市を見学した。ルッカの城壁は美しく、完全な形を保っていた。城壁上部は車が走れるほどの街路が巡らされ、ちょうど日曜日であったことから、市民たちはジョギングを楽しんでいたことが思い出される。

ルッカはあの天才建築家ブルネレッスキが、水攻めをしようとして逆に水攻めにあってしまった都市として知られている。フィレンツェ軍の一員として戦場に派遣されたブルネレッスキは、かつてセルキオ川の洪水に悩まされたルッカの都市を逆手にとって、この川の流れを変え、ルッカの廻りに大きな湖をつくり孤立させようとしたが、その計画は無残にも失敗に終わる。

このルッカの街には不思議な建造物がある。古代ローマ期につくられた円形闘技場が転用され住居になり、現在でも使用され続けているのである。これについては、黒田泰介氏の『ルッカ 1938年 古代ローマ円形闘技場遺構の再生』に詳しい。

イタリアではこうした円形闘技場が、要塞化、住居化、宗教施設化、公共施設化されたものなど、数多くの転用事例に出会うことができる。不思議なのは、円形闘技場はかつて刑場であったこともあり、不吉な場であったため、こうした建造物に住み込むようになるには、そうした穢れをどのように精神的に整理していったのか気になる。また、居住者はどのような住民、民族であったのかについても。

この書物で知ったのだが、ローマは円形闘技場としてはコロッセオが有名だが、ローマ郊外にもう一つ小規模な円形闘技場(カストレンセ円形闘技場)があるということである。この闘技場の内部は修道院の菜園となっていて、収穫された野菜や果物がこの建造物内の店舗で販売されているとのことである。

黒田氏の著書は、建築物の転用という普遍的な行為を考えながら、イタリアの建築類型学を学ぶことができる優れた書物である。

*この書物を初めて読んだのは13年前のこと。このブログで一度取り上げた。現在、13年前以上に理解力が増し、この書物の重要性を13年前以上に認識するようになった。

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by kurarc | 2019-06-18 23:23 | books