夏目漱石とアンドレア・デル・サルト

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漱石の某小説に、イタリア・ルネッサンス期の画家アンドレア・デル・サルト(上自画像、Wikipediaより)が登場する。恥ずかしながらわたしはこの画家を知らなかったが、漱石がなぜ何気なくこの画家を登場させたのか、わたしにはどうも意味深長な気がしてならない。

ダ・ヴィンチの34年後に生まれたアンドレア・デル・サルトは、ルネッサンスからマニエリズムへの境界上に位置していた画家で、漱石はそこに注目していたのではないか?

漱石の小説に見られる自然主義を超越したような作風は、もしかしたらマニエリズムを意識していたのではないか。そして、漱石はそうした絵画の風潮をいち早く吸収し、自らの小説の中に取り入れようとしていたのではないか?

漱石ほどの教養人であれば、ロンドンでアンドレア・デル・サルトの絵画を見ていたのかもしれないし、漱石が、ルネッサンスではなく、その後に続くマニエリズムの絵画に興味をもったということは十分考えられる。

また、漱石の小説は、注釈を見ると興味深い。その中に登場する古今東西の文学者、詩人、哲学者、心理学者など、小説に登場する人々、もの、思想から漱石の考え、主題、興味など様々なテクストが読解できるわけである。

漱石を誰も捉えなかったように読んでいきたい。今、そのように思っている。

*検索していくと、高山宏氏は『夢十夜を十夜で』という著書の中で、マニエリズムを念頭に読解しているらしい。やはり、考えることは同じである。

by kurarc | 2019-08-19 23:53 | books(書物・本)