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吉田鉄郎 100年前の図面

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今日は新しく始まる現場で近隣挨拶の後、旧岩崎邸庭園内にある国立近現代建築資料館で、「吉田鉄郎の近代モダニズムと伝統の架け橋」を鑑賞する。

この展示は、今からおよそ100年前、吉田の10代に描いた図面(絵画)から晩年の仕事に至るまでを俯瞰できるものであり、非常に興味深い展示であった。わたしが特に驚いたのは、吉田の絵心である。彼は、どうも美術大学(多分芸大)を志望していたようで、絵の才能に恵まれていたことを初めて知った。

また、吉田は東京大学に入学することになるが、そこでの課題案から、西洋の古典的な建築から、日本の古建築に至るまで、すべてを学んでいるということがわかった。吉田を単にモダニズムの建築家として狭義に捉えてしまうことは大きな間違いであると言える。

そうした背景もあり、わたしは彼が最晩年にスウェーデン建築へ傾斜したことがうなずけたのである。もしかしたら、東京中央郵便局のようなモダニズム建築の仕事は吉田の本心からやりたかった仕事ではなかったのではないか、これはあくまで逓信省という企業の中にいた建築家としての仕事であり、彼の中にはもう少し違った感性が眠っていたのではないか。今回の展示を見てそのように感じた。

吉田は、富山の地方都市の出身者ではあるが、その建築家としての力量は世界に通じるものを持っていた稀有な存在である。吉田の後輩たち、分離派と言われる運動を行なった建築家はジャーナリスティックに発言するものが多かったが、吉田は常に静かで冷静に仕事を行なっていたようである。このような建築家はわたしの周りにはいないし、今までに会ったこともない。

by kurarc | 2019-11-02 20:53 | architects