菊地成孔+大谷能生著 『憂鬱と官能を教えた学校(上下)』

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久しぶりにとてつもない内容の書物に出会った。わたしははじめてジャズを学んだのは20歳の頃(渡辺香津美さんのお弟子さんのT先生に学ぶ)。楽器はギターであったが、すぐに挫折した。ジャズ理論が理解できなかったのである。当時、1980年の頃、ジャズ理論を一般向けに解説してくれるような本も皆無で、渡辺貞夫の『JAZZ STUDY』という理論書がある程度であった。この書物は、数学や物理学の書物であるかのようにジャズ理論を解説なしで羅列したような書物で、素人のわたしには理解不能であった。この書物は今でも手元にあるが、もしかしたら理解可能になるかもしれない。 


それは、タイトルにあげた『憂鬱と官能を教えた学校( 上下)』(上下巻、およそ文庫で700ページ)を読解できたことによってである。この書物の主題は、アメリカのバークリー音楽院で体系化された「バークリー・メソッド」(音楽を機能主義的に考えられるように考案された体系と理解した)を批判的に読解したものであり、これが20世紀のジャズや商業音楽他に与えた影響を分析している。その一方で、クラシックや民族音楽を踏まえ、音楽全体を相対化することを副題としているような書物である。


手短にこの書物を読むと何が理解できるのかというと、それは、私たちの周りに存在している音楽の理論的背景が理解できるのである。もちろん、ジャズ理論も理解できる。また、音楽人類学的内容も含んでいるため、例えば、アフリカ音楽とブラジル音楽の違いなどについても言及されていて興味が尽きない。


読み始めた当初、この書物はジャズのみに関する書物と思っていたが、その予想は見事に打ち砕かれた。そのパースペクティブの広大さには驚かされた。クラシック音楽おも相対化してしまおうという野望にも、その鋭い切り口にも驚かされた。この内容を21世紀に入ってすぐ、2002年の段階で行なっていた菊池と大谷の音楽に対する博覧強記には脱帽せざるを得ない。彼らの書物はすべて読解したくなった。


*若い時にわからなかったことが、歳をとってわかるようになることがある、ということである。ジャズ理論を理解するのに35年以上かかってしまった。


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by kurarc | 2019-11-17 20:13 | music(音楽)