「それ」との付き合い方

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河合隼雄先生の『こころの読書教室』を一気に読む。この本は、全体が4章あり、それぞれの章に読んでほしい本5冊ともっと読んでみたい人のために、としてもう5冊の書物が紹介されている。

河合先生の文章は平易でありながら、深い内容を理解させてくれる。たとえば、フロイトが定義したドイツ語 "Es" は「それ」といった意味だが、そのようにそのまま理解すればよいと教えてくれる。「自我はエスの侵入を受けて」というような言い方ではなく、「わたしは”それ”にやられました」といった程度にと。

「それ」とは「無意識」のことだが、我々は、自我とは別にもう一つの自分「無意識」があることを薄々感じ取っている。そのことをフロイトは単に「それ」と呼んでおこうとしたのであるが、頭の良い翻訳者は、「それ」を大げさに訳してしまっていると河合先生は注意している。

我々は、自我と「それ」との境界に扉があって、普通はコントロールしている。しかし、ある時、その扉を開きすぎると今まで思ったことのないような無意識の中のもう一人の自分が現れ、驚くことになる。二重身や二重人格はそうした現象の現れの一つである。そうした現象は、逆に世の中が豊かになると増えるという。戦争になると自殺者が減るらしく、人は食うや食わずの状態では「それ」はあまり表に現れてこない。

一方、「それ」はネガティブなことばかりではない。夢での体験はその一つである。こうしたことを知るには、フィリパ・ピアスの童話『トムは真夜中の庭で』を読むとよい、といった読書案内にもなっているのが本書『こころの読書教室』である。

河合さんの書物で童話の重要性を教えられた。『ジョコンダ夫人の肖像』(E.L.カニグスバーグ著)のような名作を知ったのも河合さんの書物からであった。今後、読書する書物の中に童話を含めることを忘れないようにしたい。新年は少なくとも20〜30冊の童話を読むことが目標である。その中で河合さんの専門とするユングの心理学が学べるのだから。

by kurarc | 2019-12-29 23:28 | books(書物・本)