ポール・オースター作 『幽霊たち』

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ポール・オースターを知ったのはおよそ20年ほど前である。わたしがリスボンに住んでいたとき、街の書店に入るとオースターの書籍が並んでいた。売っているのはポルトガル語版だから買ったりはしなかったが、流行りの作家なのだろうと思った。

小説は基本的に好んで読む方ではないが、3年ほど前、ガルシア・マルケスやジュリアン・グラックなどの小説を読み始めて、また興味が湧いてきた。年末の大晦日、ポール・オースター作『幽霊たち』を一気に読んで、年を越した。

どこかの推薦図書として掲載されていたように思ったが、どこで読んだのか思い出せない。その記憶があり、たまたま本屋で視界に入ってきたので、買い求めた。オースターのニューヨーク3部作の1つ。今までに読んだことのないような小説であった。

この小説が興味深いのは、そのストーリーの速度感である。初めはゆっくりと話が進み、小説の内容も素人が書いているのでは、といった稚拙さが感じられるが、終わりにはその速度感が10倍くらいに感じられ、いつの間にか迷宮に入り込み、オースターの手腕を思い知らされる。そして、煙に巻かれたように終わりを迎える。1980年代に書かれた小説のようだが、ここには1980年代に書かれるべくして書かれたと思わせる小説におけるポスト・モダンとも言える世界が表現されているように感じられた。

まずは3部作の残り2つ、『ガラスの街』と『鍵のかかった部屋』を読んでオースターの世界を楽しみたい。

*小林康夫著、『若い人のための10冊の本』(ちくまプリマー新書)の中の1冊に本書が取り上げられている。

by kurarc | 2020-01-01 21:14 | books(書物・本)