春田俊郎著『自然界83の謎 地球が生き残るための知恵』

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春田俊郎先生は、わたしの母校(都立調布北高校)の校長先生であり、生物学者であった方である。その春田先生は晩年に、1973年に出版された『自然界99の謎』を原本として文庫化したのが本書である。

高校時代、山岳部で活動していたわたしは、春田先生が山にも詳しい方だったことから、夏合宿の前など、校長室へ行っては、これから登る山のことを相談に行っていた。高校生では厳しいと思われる山でも、春田先生はただ「行ってらっしゃい」というだけ。わたしたちはその言葉に励まされて、山に出かけていった。

本書は自然の謎について平易な文章でまとめられているが、興味深いのは、第8章に「災害をめぐる自然の謎」という章をもうけていることである。火山、地震、豪雨、台風、洪水、高潮、異常気象、雪崩、雷、火災という項目から構成される第8章は、最近の災害を予見しているように感じられるが、実はそうではない。春田先生は、災害の歴史を遡って記述しており、災害が繰り返されていることを警告しているのである。良識ある科学者であるならば、災害とはいつの日にも起こりうるものであるというのは過去が示している、ということはわかっているはずだが、春田先生はただそのことをとりあげたにすぎない。自然の美しさのみをとりあげるような本になっていないのは、春田先生の自然観からくるものだろう。

また、あとがきに驚くべきことが書かれている。「・・・地球上の人間によく似た宇宙人は存在しない・・・」と春田先生は言っている。それは、物事には因果がからんでいて、この宇宙には地球が存在している要因はここでしかありえない、という考えを春田先生はもっていたようである。どこかに我々と同じような宇宙人が存在するのではないか、と安易に想像してしまうが、確かに、地球が生まれた要因はこの場所でしかありえなかったのではないか、わたしもそう思いたい。

春田先生と山のことだけでなく、自然について議論をしておくべきであったが、そう思うにはあまりにも遅すぎた。偉大な人は意外と身近にいるものなのだ。そんなことを今更ながら思うこの頃である。

by kurarc | 2020-01-27 23:06 | nature(自然)